レバノンの首都ベイルート中心部で10日、イスラエル軍による空爆があり、22人が死亡、117人が負傷した。レバノン保健省が発表した。
現地で取材するBBC記者たちは、空爆があったベイルート・バショーラから響く大きな爆発音を聞いた。バショーラはイスラム教シーア派組織ヒズボラの拠点となっている狭い地域。現場では救助隊ががれきを掘り返している姿が見られた。
多くの負傷者は市内のアメリカン大学病院に搬送された。
正確性が確認されていない複数報道によると、空爆の標的は先月にイスラエル軍の空爆で殺害されたハッサン・ナスララ師の義弟でヒズボラ高官のワフィク・サファ氏とされる。ヒズボラのメディアオフィスはこれについて今のところコメントしていない。
イスラエルは数週間にわたり激しい攻撃を続けているが、ベイルートはこの2日間比較的平穏だった。
10日の空爆について、事前の警告はなかった。
空爆を目撃した女性によると、4～5階建ての集合住宅が攻撃を受けた。この女性の親族の1人も頭部を負傷して治療を受けているという。
イスラエル軍によると、ヒズボラはこの日、レバノンからイスラエルに向けて約190発のロケット弾を発射した。
これに先立ち、レバノンの公衆衛生当局は、同国東部カラク村がイスラエルの空爆を受け、4人が死亡、17人が負傷したと発表していた。
イスラエル軍、国連の拠点も攻撃か
ベイルート空爆の数時間前には、レバノン南部でイスラエルの戦車が監視塔を砲撃し、インドネシア人の平和維持要員2人が負傷した。国連が明らかにした。
レバノンに展開している国連平和維持軍の国連レバノン暫定軍（UNIFIL）は声明で、ナクーラにある国連基地の監視塔が直接攻撃を受け、平和維持要員が転落したと説明した。
国連によると、イスラエル軍は過去24時間、国連の拠点を「繰り返し攻撃」した。また、イスラエル兵がUNIFILのほかの2基地にあるカメラとライトに意図的に発砲したと、国連は非難した。
イスラエル国防軍（IDF）は、イスラエル部隊は国連の基地のメンバーに「保護された場所」にとどまるよう命じた後に、基地周辺から発砲したとしている。
国連は、平和維持要員2人のけがは深刻ではないとしつつ、意図的な攻撃は「重大な国際法違反」だと付け加えた。
イスラエル兵はナクーラの基地でも発砲し、「平和維持要員が避難していた地下施設への入り口が攻撃され、複数の車両と通信システムが損傷を受けた」という。
地下施設の入り口の上空をイスラエルのドローン（無人機）が飛行しているのも目撃された。
ヒズボラはナクーラで、地上にいるイスラエル兵に向けてロケット弾を発射したほか、接近してきた戦車を誘導ミサイルで破壊し、複数の死傷者が出たとしている。
イスラエルは9月30日に対ヒズボラ地上作戦を開始。現在は4師団のイスラエル兵がレバノン領内で戦闘を続けている。
UNIFILの広報担当アンドレア・テネンティ氏は10日、平和維持部隊が駐留する地域におけるイスラエル軍の活動を「警戒」し、「深く懸念している」とBBCに語った。
テネンティ氏によると、イスラエル部隊の攻撃を受けた場所は国連の拠点としてよく知られているといい、イスラエル当局と「何が起こったのかを理解するために」話し合うことが重要だろうと述べた。
UNIFILは1978年の設立以降、レバノン南部のいわゆる「ブルーライン」（国連が設定したレバノンとイスラエル、イスラエル占領下のゴラン高原を隔てる非公式な境界線）と北約30キロメートルに位置するリタニ川の間の地域で活動してきた。
IDFは先週、ブルーライン付近の陣地から離れるよう命じたが、UNIFILはこれに応じなかった。
レバノンには50カ国から約1万人のUNIFIL平和維持活動の軍事要員が派遣されている。約800人の文民スタッフもいる。
今回負傷した平和維持要員の出身国インドネシアは、最多の1200人超の兵士をUNIFILに派遣している。
UNIFILに兵士1000人超を派遣しているイタリアの国防相は、今回の出来事は「容認できない」ものであり、「慎重に、断固として回避しなければならない」と述べた。
パレスチナ・ガザ地区でのイスラエルとイスラム組織ハマスとの戦争を端緒とした、イスラエルとヒズボラの戦闘は1年以上続いている。レバノン政府によるとこの間、約120万人が家を追われたという。
ヒズボラと同様にイランから支援を受けるハマスは昨年10月7日、イスラエル南部を奇襲し、約1200人を殺害、251人を人質に取った。イスラエルは直後にガザ地区へ報復攻撃を開始した。この翌日にヒズボラがイスラエル北部にロケット弾を撃ち込んで以降、国境を挟んだ地域での敵対行為は着実にエスカレートしている。ヒズボラはパレスチナ人に連帯を示すために行動しているとしている。
ハマス運営のガザ保健省は、イスラエルのガザ攻撃で4万2000人近くが死亡したとしている。
