2024年10月14日(月)

BBC News

2024年10月14日

レバノン南部で活動している国連平和維持軍は13日、イスラエルの戦車が早朝、拠点の一つに強行突入したと発表した。

国連レバノン暫定軍(UNIFIL)は声明で、イスラエル国境に近いラミヤの拠点で、イスラエル国防軍(IDF)の戦車2台が正門を破壊し、「強制的に拠点に侵入」して照明を消すよう要求したと述べた。

その約2時間後、近くで発砲があり、キャンプ内に煙が流れ込んだため、平和維持要員15人が皮膚の炎症や胃腸障害の症状を訴えたと発表した。

これについて、IDFは別の説明をしている。IDFは、対戦車ミサイルで負傷した兵士を避難させるために、UNIFILの拠点に入ったと発表した。

この攻撃ではの兵士2人が「重傷」を負い、他の兵士も軽傷を負ったという。

「銃撃の脅威のために前進できない場所で、負傷者を避難させるため、戦車2台がUNIFILの拠点に向かって数メートル後退した」と、IDFは述べている。

またこの一件の際、避難援護のため発煙弾を発射したことや、UNIFILと「継続的に連絡を取り合っていた」ことを付け加えた上で、「IDFの活動によるUNIFIL部隊への脅威はない」と強調した。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、平和維持要員に対する攻撃は「戦争犯罪に該当する可能性がある」と警告。「UNIFILの要員および施設は決して標的とされてはならない」と述べた。

グテーレス氏の報道官は、グテーレス氏が「平和維持要員に対する攻撃は、国際人道法を含む国際法に違反する」と語ったと、声明で述べた。

このところ、UNIFILとイスラエル軍との衝突が増加している、

イスラエルは、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラを標的とした地上侵攻を9月30日に開始して以来、平和維持部隊に対し、戦闘が起きているレバノン南部から撤退するよう繰り返し求めている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は13日、首相官邸が発表した動画の中でUNIFILに対し、「ただちに」軍を「危険地域から撤退させる」よう指示した。ネタニヤフ首相は、同地域におけるUNIFILの存在は「ヒズボラの人質」となっていると主張している。

UNIFILはこれまでのところ、イスラエルの要求を拒否している。

UNIFILは、「ここ数日で4度目となるが、我々はイスラエル国防軍およびすべての関係者に、国連の職員および資産の安全とセキュリティーを確保し、国連施設の不可侵性を常に尊重する義務があることを改めて伝える」と述べた。

また、ラミヤの施設への侵入を「国際法に対するさらなる明白な違反」だと表現した。

UNIFILはさらに、12日にはイスラエル軍が国境付近のメイス・エル・ジェベルでも「重要な」後方支援活動の遂行を妨害したと付け加えた。

IDFはこの件についてまだコメントしていない。一方でIDFは、ヒズボラがUNIFIL施設の近くから、先月だけで25発ほどのロケット弾やミサイルを発射したと主張。ヒズボラが「国連軍への近接性を悪用している」と非難した。

ヒズボラとイスラエルは、昨年10月にパレスチナの武装組織ハマスがイスラエル南部を攻撃して以来、ほぼ毎日、国境を越えて砲撃を繰り返している。

UNIFILは1978年の設立以降、レバノン南部のいわゆる「ブルーライン」(国連が設定したレバノンとイスラエル、イスラエル占領下のゴラン高原を隔てる非公式な境界線)と北約30キロメートルに位置するリタニ川の間の地域で活動してきた。

レバノンには50カ国から約1万人のUNIFIL平和維持活動の軍事要員が派遣されている。約800人の文民スタッフもいる。

イスラエルは先に、UNIFILに対し、5キロ北に撤退するよう要請している。

イスラエルは、レバノン南部でUNIFIL隊員が負傷した件について、国際的に非難されている。IDFは、一部のケースでは国連施設に向けて発砲したことを認めている。

UNIFILは13日、隊員1人が銃撃で負傷したと発表。隊員の負傷はここ数日で5人目となる。

声明の中でUNIFILは、この隊員は12日夜、南部の都市ナクーラにある本部で負傷した説明。「付近で継続中の軍事活動」が原因で負傷したとしながらも、発砲の起源は不明だとしている。

この隊員はナクーラ病院で銃弾摘出の手術を受け、容体は安定しているという。

IDFは前日の12日、スリランカ出身のUNIFIL隊員2名が負傷した件について、自軍に責任があると発表した。

さらに10日には、IDFの戦車がUNIFILの監視塔に向けて発砲したため、インドネシア出身の兵士2名が負傷した。

これらの事案について、フランス、イタリア、スペインなどイスラエルの同盟国数カ国が非難している。イギリスの政府報道官も、「とんでもないことだ」と述べた。

一方、13日の動画声明でネタニヤフ首相は、欧州の指導者たちはイスラエルではなくヒズボラを批判するべきだと述べた。

イスラエルは、UNIFILがこの地域を安定化させ、ヒズボラの戦闘員がリタニ川の南で活動することを阻止できなかったと主張している。

イスラエルは以前、自分たちはレバノンおよびレバノン国外の武装勢力の解散を求める2004年の国連決議に従って行動していると述べており、UNIFILに対する撤退要請も、ヒズボラと対峙(たいじ)するためだとしている。

ネタニヤフ氏は、こうしたイスラエルの訴えは「拒否された」と述べ、UNIFILは「ヒズボラのテロリストたちに人間の盾を提供している」と指摘した。

「これは、UNIFILと我々の兵士たちの命を危険にさらす行為だ」と、ネタニヤフ氏は付け加えた。

「我々はUNIFIL隊員の負傷を遺憾に思うとともに、こうした負傷を防ぐために全力を尽くしている。しかし、これを確実に実現するための単純明快な方法は、UNIFILを危険地帯から撤退させることだ」

UNIFILは、同地域からの撤退を繰り返し拒否している。

UNIFILのアンドレア・テネンティ報道官は12日、AFP通信に対し、「この地域で国連旗が依然として高く掲げられていることが重要であるため、残留することが満場一致で決定された」と語った。

レバノンのニジャブ・ミカティ首相は、ネタニヤフ首相の立場を非難した。

声明の中でミカティ首相は、イスラエルの首相の発言は「国際的な正当性を認めない敵対行為の新たな局面」を表していると述べた。

その上で他の国々に対し「イスラエルの侵略を阻止する断固とした立場を取る」よう促した。

(英語記事 UN says Israeli tanks forced entry into base in south Lebanon/Fifth peacekeeper wounded in southern Lebanon, UN says

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cp3wxx103xdo


新着記事

»もっと見る