米運輸省は15日、独航空大手ルフトハンザに対し、過去最大の400万ドル(約6億円)の制裁金を科したと発表した。マスク着用のルールに一部の乗客が従わなかったとして、ユダヤ系の乗客全員の搭乗を禁じたのを受けた措置。
この問題は、2022年5月に米ニューヨークからハンガリー・ブダペストに向かっていた乗客らに関係するもの。乗客らは独フランクフルトで乗り継ぐ予定だった。
米運輸省によると、乗客の多くは男性で、「正統派ユダヤ教徒の男性が通常着用する特徴的な服装」をしていた。また、少数の旅行代理店に集中して航空券を購入していたという。
最初のフライトの最中、機長がルフトハンザのセキュリティー担当に対し、乗客の一部がマスク着用を求める乗務員の指示に従っていないと連絡。また、機内で通路などに集まることを禁止したと伝えた。
この連絡により、この便の100人以上のユダヤ系の乗客全員の航空券が保留扱いとなり、乗り継ぎ便に搭乗できなかった。
米運輸省によると、ルフトハンザはこの措置で、指示に従っていた乗客にも悪影響が及ぶと分かっていたが、「乗客に個別対応するのは現実的ではないと判断した」という。
乗客の大半は、同じ日の別の便に予約を変更したという。
米運輸省は、ルフトハンザが乗客を差別したと説明。「多くの人は一緒に移動していたわけではなく、互いに知り合いでもなかったのに、あたかも全員を一つのグループのように」扱ったとした。
そして、ルフトハンザに対し制裁金200万ドルの支払いを要求。これは、同社が法的和解の一環としてすでに乗客らに200万ドルを支払っていることを考慮するものだとした。
また、今回の制裁金について、公民権侵害をめぐって航空会社に科したものとしては過去最大だとした。
ピート・ブティジェッジ運輸長官は、「旅行中の誰も差別を受けてはならない。今日の措置は、乗客の公民権が侵害された場合にはいつでも私たちが調査に乗り出し、措置を講じる用意があるとの明確なメッセージを航空業界に送るものだ」とした。
ルフトハンザは差別を否定
ルフトハンザは、訴訟を避けるために支払いに同意するとしたが、差別は否定。「一連の不幸で不正確なコミュニケーション」による出来事だったとした。
同社は声明で、「ルフトハンザは友好、寛容、多様性、受容の代表であることに情熱を注いでいる」と主張。当局の調べに協力してきたと述べ、引き続きスタッフの研修に力を注いでいくとした。
米運輸省によると、調査のため事情を聞かれた乗客らは、問題行為を見てはいないと述べた。ルフトハンザは、規則を守らなかった乗客を1人も特定できなかったという。
ルフトハンザは、制裁金の支払いに同意する中で、乗客の特定ができなかったのは「違反が非常に多く、問題行為はフライトのかなりの時間さまざまな間隔で続き、乗客が座席を変更していた」ためだとした。
(英語記事 Lufthansa hit with record penalty after barring Jewish passengers)