2024年10月17日(木)

BBC News

2024年10月17日

イタリアの議会は16日、カップルが国外で代理母を通じて子供を持つことを禁止する法案を可決した。

同国ではすでに、国内での代理出産が禁じられている。今回の議決により、アメリカやカナダなど、代理出産が認められている国でこの代理出産を利用することも違法となった。違反した場合、最長で禁錮2年の実刑判決と最高100万ユーロ(約1億6000万円)の罰金が科せられる可能性がある。

極右の与党「イタリアの同胞(FDI)」が提出したこの法案は、性的マイノリティー(LGBTQ)の人々を標的にしていると批判されていた。イタリアでは、同性カップルは養子縁組や体外受精で子供を持つことが認められていない。

代理出産では、女性が別のカップルや個人のために妊娠する。不妊症が理由の場合のほか、男性の同性カップルが利用することもある。

以前からLGBTカップルが関わる代理出産に反対

国外での代理出産利用を禁止する法案は16日、84対58の賛成多数でイタリア上院を通過した。

採決に先立って行われた抗議活動で反対派は、イタリアでは出生率が低下しているにもかかわらず、この法律は人々が親になることをより困難にすると主張した。

LGBT活動家のフランコ・グリッリーニ氏はロイター通信に、「誰かが赤ちゃんを授かったら、その人には勲章が与えられるべきだ」と語った。

「ここでは、伝統的な方法で子供を作らないと(中略)刑務所に入れられてしまう」

「これはとんでもない法律だ。こんな法律は世界中のどこにもない」

今回の立法は、イタリア初の女性首相であるジョルジャ・メローニ氏の保守的な政策の一環だ。

メローニ氏は、自らをキリスト教徒の母親だと表現しており、子供は男女カップルによってのみ育てられるべきだと考えている。

メローニ氏は以前も、LGBTカップルが関わる代理出産への反対を表明していた。反LGBT的発言は、同氏の選挙活動の特徴でもあった。

2022年の演説では、「自然な家族にはイエス、LGBTロビー活動にはノー」と発言した。

メローニ政権は2023年、ミラノ市議会に、同性カップルの子供の出生登録を停止するよう指示した。

メローニ氏は代理出産を「欲望を権利と混同し、神を金で置き換える忌まわしい社会の象徴」と表現している。

マッテオ・サルヴィーニ副首相も代理出産について、女性を「ATM」のように扱う「異常な行為」と呼んでいる。

今回の法案を起草したカロリーナ・ヴァルキ議員は以前、法案に性的少数者を傷つける意図はないと述べていた。

ヴァルキ議員は、「代理出産を利用する人のほとんどは異性愛者だ。この法律は女性とその尊厳を守るものだ」と話した。

専門家らはBBCに対し、イタリアで代理出産を利用するカップルの90%は異性愛者で、その多くは国外で出産した事実を隠していると語った。

しかし、子供を連れてイタリアに戻ってくる同性愛者の家族は、同じように隠すことはできない。

各国の代理出産に関する法律

・イタリア、スペイン、フランス、ドイツなどの欧州の国々は、あらゆる形の代理出産を違法としている

・イギリスでは、代理出産をめぐって妥当な費用を超える報酬を支払うことは違法。また、親権命令によって親権が移行されるまでは、代理母が出生証明書に登録される

・アイルランド、オランダ、ベルギー、チェコでは、裁判所が代理出産契約を執行することはできない。これはイギリスでも同様で、親権をめぐって意見の相違がある場合には、裁判所が子どもの最善の利益を決定する

・ギリシャは外国人のカップルを受け入れ、両親となる2人に法的保護を提供している。一方、代理母には子供に対する法的権利はない。ただしギリシャは、代理出産の関係には女性が関わるべきだと主張している(そのため、男性の同性愛カップルや独身男性は除外される)

・アメリカとカナダでは、同性カップルが代理出産で子供を持つことが認められており、出生時から法的な親と認定される

(英語記事 Italy bans couples from travelling abroad for surrogacy

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c1jd4e53p81o


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