2024年11月22日(金)

ベストセラーで読むアメリカ

2009年5月4日

 とにかく、国が民間に介入してもいいことはないという、アメリカ的な発想が鮮明だ。苦境に陥っているアメリカの自動車産業についても、さまざまな規制の導入を好む国家統制主義者が自動車産業を崩壊させた、と言い切る。そして、次のように述べる。

 However, does this justify the taxpayer bailing out the industry and the UAW with tens of billions of dollars in subsidies? The answer is no. p81

 「だからと言って、自動車産業とUAW(全米自動車労組)を何百億ドルもの補助金で救済することが、納税者に対し正当化できるのか? 答えはNOだ」

これからもオバマが高い支持を得られるとは限らない

 2008年9月29日に、アメリカの下院で、金融機関に公的資金を投入する、いわゆる金融安定化法案が否決され、ダウ平均株価が1日で777ドルも急落した事件があった。国の介入を嫌うアメリカ的な保守思想を下院議員たちもよく理解しているから、有権者の反発を予想して反対票を投じた結果だったとみるべきだろう。

 欧州各国が昨年夏以降、金融機関の国有化で金融危機の沈静化に動いたなか、アメリカは銀行などの国有化を回避し続けている。日本では銀行の国有化を好意的にとらえる向きが多いが、独立戦争以来、政府を脅威と考える伝統があるアメリカでは、文化的に受け入れられない選択肢なのだ。

 日本ではオバマ政権について、高い支持率を背景に大胆な政策を打ち出すヒーローとして報じる傾向が強い。アメリカ国内の保守派の存在を考えると、経済の危機的な状況を前に国の介入を大きくする政策をとらざるを得ないオバマ政権は、このままアメリカ国民から高い支持を得られるとは限らないことが、本書を読めば分かるのではないだろうか。

 

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