■今回の一冊■
LIVERTY AND TYRANNY
著者Mark R. Levin, 出版社Threshold, $25.00
典型的な米国保守派の主張とは
LIBERTY AND TYRANNY
ニューヨークタイムズ・ベストセラーリスト
単行本ノンフィクション部門
5週連続トップ
ニューヨークタイムズ・ベストセラーリスト
単行本ノンフィクション部門
5週連続トップ
タイトルは直訳すると「自由と圧制」。サブタイトルのA CONSERVATIVE MANIFEST(保守派宣言)の方が本書の内容をそのものずばり示す。タイトルの自由とは保守のことを指し、圧制とはリベラル思想を指す。アメリカのラジオのトークショーのホストとして著名な保守派の論客の手になる論争の書だ。
政府の役割はなるだけ小さい方がよく、さまざまな調整機能は自由市場にゆだねるべきだという、アメリカの保守主義の基本的な理念を踏襲する筆者の主張にそれほど目新しいものはない。しかし、出版後すぐにニューヨークタイムズ紙のベストセラーリストの単行本ノンフィクション部門の第1位に顔を出し、5月1日付のランキング(ウェブ版)で5週連続トップの座を守り続けている。
本書の爆発的な売れ行きは、景気てこ入れのための巨額の財政出動など、政府の役割が肥大化するオバマ政権の政策に不満を持つアメリカ国民が相当数いることを物語る。日本国内ではなかなか感覚的に分からない、アメリカの保守の考え方がよく分かる著書だ。
まず、大恐慌時に就任しアメリカ経済を再生した名大統領として、日本では評価が高いフランクリン・ルーズベルトについて、全く逆の評価をしている点が目をひく。大型の公共工事を相次ぎ打ち出したニューディール政策そのものが、個人の権利を尊重する建国の理念や合衆国憲法から逸脱したものだと攻撃する。