2026年1月12日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年1月12日

 2025年11月18日付ワシントン・ポストによれば、米国議会に提出された超党派の年次報告書は、中国の脅威に対する迅速な対応の必要性を強調し、中国製に依存する米国の電力網のリスクを警告し、中国の宇宙における軍事力などの脅威に対する制裁を米国政府に強く求めている。

(tcly/Barks_japan/gettyimages・AP/アフロ)

 米議会の対中経済安全保障評価委員会は、中国の軍事力・経済力の急拡大が米国の国家安全保障に「質的に新しい脅威」をもたらしつつあるとして、米議会に対し迅速かつ抜本的な対応を求める年次報告書を提出した。同委員会は、過去1年で中国の行動はエスカレートし、米国の電力網、供給網、宇宙領域、AIや量子などの戦略技術に深刻な影響を及ぼす可能性があると警鐘を鳴らす。

 最も重要な提言は、省庁横断で制裁・輸出規制を統括し、大統領に直接報告する新たな「経済国家運営機関」の設置を求めていることである。国防総省、商務省、財務省などが個別に対応する現在の体制では、対中戦略技術の管理が各省庁間に分断され、規制が十分効果的に機能していないと指摘する。過去10年間、米国は先端半導体や AI チップが中国軍の手に渡るのを阻止しようとしてきたが、政策遂行の手際が悪く抜け穴が存在し、中国は軍事目的の技術を取得し続けた。

 また同報告書は、米国電力網の脆弱性を深刻に捉えている。米連邦捜査局(FBI)が中国の国家主体によるものと断定した23年のサイバー攻撃を例に、電力・通信・水道といった基幹インフラに対して中国が緊急時に妨害行動を取る能力を持ち得ると警告している。特に遠隔監視機能を備えた中国製のエネルギー貯蔵システムが米国内で広く使用されている点を危険視している。

 軍事面では、中国が衛星を拡大配備し、特にインド太平洋において米軍の機動力や指揮統制能力を制限する可能性があると指摘する。宇宙技術において米国は依然優位にあるとはいえ、中国の成長速度は無視できず、宇宙軍への継続的投資と演習強化が必要だとする。

 台湾情勢も報告書の中心的論点である。習近平が27年までに台湾侵攻能力の確立を軍に指示したとされることに加え、中国の24時間体制の軍事活動や台湾周辺での事実上の封鎖行動は、中国軍が「ほとんど警告なしに侵攻可能」な段階に近づいていることを示すと分析している。

 対中経済安全保障評価委員会は、米国は台湾有事を差し迫った危険として備える必要があると訴える。また国防総省とインド太平洋軍が台湾防衛準備について議会に十分な説明を行っていないとし、台湾関係法に基づく状況の説明を詳細に行うように求めている。

 この報告書は、トランプ大統領による激しい関税政策と、中国による希土類元素独占に対する報復的な規制によって揺らぐ米中関係の不安定化が続く中で発表された。


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