委員会は、貿易のみを重視する対中姿勢は戦略的脅威への認識を鈍らせるとして懸念している。特に台湾への武器売却凍結や米台高官協議の停止など、最近の政策変更は抑止力を弱める恐れがあると警告した。さらに同委員会は、インド太平洋の脆弱なパートナー国への支援拡大や米国沿岸警備隊の役割強化を推奨し、地域の既存秩序を維持する必要性を強調している。
総じてこの報告書は、中国の軍事・技術・経済力の急伸に対し、米国は「遅れをとれば取り返しがつかない」との危機感を呈示し、電力網、サプライチェーン、宇宙、AI、台湾情勢にわたる包括的な対抗戦略を直ちに講じるよう政府に求めており、米国が主導権を維持できるかは、これらの提言の実行速度にかかっていると結論付けている。
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中国が講じる4つの戦略
米国議会の対中経済安全保障評価委員会は、良いタイミングで年次報告書を議会に提出した。この記事の通り、報告書は、米国議会の中国に関する基本姿勢を明確にし、トランプ政権が早急に実行すべき諸施策の方向性を示している。
トランプ大統領の安全保障戦略に対しては、同盟諸国は不安を感じている。この機会を、国々の分断を目論む中国が見逃すはずはない。
中国は第一に、米国の同盟諸国内に「米国は本当に同盟国を防衛するだろうか」という疑念を増幅させようとしている。その際、米国の利益と同盟諸国の国益に乖離があることを示唆する。
中国は第二に、米国の同盟諸国が抱える課題を取り上げ、米国と同盟国との関係を弱体化させようとしている。日本に対しては、日本産業界の対中経済依存度を利用し、サプライチェーンを経済制裁で切断したり、「台湾有事は日本有事である」と安倍晋三元首相が述べた視点への国民的温度差を拡大したりして、日本国内に政治的経済的な混乱を生じさせようとしている。高市早苗首相発言へのネガティブ・キャンペーンはその典型例だ。
第三に中国は、諸外国に対して経済取引関係と安全保障は別で混同すべきでないと主張し、米国の同盟諸国には安全保障では米国に依存しても、経済では中国と協調するという二重構造を固定化させようとしている。それにより中国は米国の同盟国とも経済関係を続け、課題を抱える中国経済を補強し、軍事力の強化を継続しようとしているようだ。一方、中国自身は経済力と軍事力は一体であることを認識している。
そして第四に中国は、自らは平和を志向しているが米国が緊張を煽っているという印象を世界に拡散しようとしている。認知戦の典型的攻撃である。
