2024年11月18日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年11月18日

 国防情報本部は、「11月に北朝鮮がICBMを発射する可能性がある」と報告した。北朝鮮はいまだICBMを通常の角度と距離で発射したことがなく、大気圏再突入技術はいまだ有していない。しかしロシアが再突入技術を提供すれば、それで北朝鮮の核ミサイルは完成する。それは、北朝鮮が望む米国との「核軍縮交渉」が可能になる条件が全て整うことを意味する。

 金正恩が、見返りもないのに、朝鮮人民軍兵士1万人を危険な戦闘地域に送り出すことはあり得ない。今、圧力を受けて焦っているのは、ウクライナ侵略で60万人以上の死傷者を出しているプーチンだ。

 プーチンは、金正恩からの要求を受け入れ、原潜、ICBM再突入技術、最新型戦闘機を譲歩として提供するだろう。しかし、このような決定は、韓国に対する意図的な敵意を表すものだ。ロシアがこうしたレッドラインを越えるのであれば、韓国は緊急の対抗措置を取らざるを得ないだろう。

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トランプ新政権にとっても重要課題

 ウクライナ国防省は11月2日、ロシアが北朝鮮兵7000人以上をロシア西部クルスク州へ移動させたと発表した。同州はウクライナが越境攻撃をしている。

 ウクライナのゼレンスキーは5日、北朝鮮と初めて交戦したことを認めた。しかしそれは小規模だった。ウクライナ国防相ウメロは、北の兵士は最大1.5万人にまで増加するとの見方を示している。

 上記の社説は、「今、圧力を受けて焦っているのは、…プーチンだ。プーチンは、金正恩からの要求を受け入れ、原潜、ICBM再突入技術、最新型戦闘機を譲歩として提供するだろう」、「ロシアがかかるレッドラインを越えるのであれば、韓国は緊急の対抗措置を取らざるを得ないだろう」と言う。

 圧力を受けているのは金正恩ではなく、プーチンだとの指摘は正しいだろう。金正恩は狡猾だ。

 北の兵士のウクライナ戦域への派遣は、ウクライナ戦争だけでなく、朝鮮半島の戦略状況、更に我が国の安全保障にも深刻な影響を与えうる。日米韓などを中心に我が方の抑止力の強化に努めることが重要である。

 北朝鮮問題は、11月5日の大統領選に勝利したトランプ新政権の重要課題にもなるだろう。また危うい対北外交をやるのか、リスク管理外交に転じるのか、注意が必要だろう。


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