ICCはルールに基づく秩序を作ろうとする熱意の象徴だ。西側が自らの権力を他国に譲ることを真に始める機会としてこれ以上のものは無い。
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先進国が取り込むべき国
BRICSは、予想以上の速さで加盟国を拡大している。これは、「雑多な」国の集まりという短所を助長するが、一方、国際社会における「発言力」は増え、既存の秩序への抵抗勢力としても一層正統性を高めていくのは不可避だ。それに対して、既存勢力である西側諸国は何をすべきなのだろうか。
第一に、正攻法として、各国の国力に応じた権力の再配分が必要だろう。この論説では、その点が当然のように書かれ、リオG20でそれが一定程度進むという期待が述べられているが、それはそう簡単ではないだろう。
問題は、先進国から台頭諸国への権力再配分と、覇権を巡る米中対立が結びついていることだ。中露が主導する「グローバル・サウス」は、米中対立において中国側に有利に働く。米国は、自らが主導する国際秩序の変更に強い抵抗感があるだろうし、それが戦略的競争相手である中国を利する場合にはなおさらだろう。その中で、何をどのように再配分していくのか、先進国間で真剣に議論することが重要だろう。
もう一つの方向性は、BRICS諸国と、グローバル・サウス諸国の取り込み競争をするということだ。米国が国際紛争解決への関与意思を減退させる中で、その責任を同盟国間で分担しなければならず、その場合に予想される関係国からの非難に強靭になるために、解決策に対する国際社会の支持を増やしていかなければならない。