トランプはこのリスクを認識し、中国のハイテク企業に対する関税、輸出規制、制裁を強化し、ハイテク部門への米国投資を厳しく審査するだろう。この戦略は超党派の支持を得て、中国の高度な軍事力の開発と展開を妨げることができるかもしれない。
米国にとり関税措置は、消費者に影響を及ぼす貿易戦争を引き起こすが、トランプは、戦略的利益のために短期的な政治的コストを受け入れる用意があり、世論調査によれば、ほとんどの米国人はトランプの関税による威嚇を支持している。
最後の手段として、習近平は台湾や南シナ海での緊張を増大する可能性があるが、それは米国の同盟関係を活性化させ、地域の米軍のプレゼンス強化を招く。
永続的な成功を収めるには、米国国内の刷新、軍事費の強化、民間活力、そして特にアジア・欧州の同盟関係等を組み合わせ、より広範な「力による平和」のアプローチが必要となる。次期政権は、これが中国と対峙するための重要な要素であることを理解し、「アメリカ・ファースト」のアプローチを刷新して同盟国間の公平な負担に焦点を当てることが必要だ。
同盟国への過度な関税賦課や相互防衛協定への米国のコミットメントが疑問視されることは、抑止力を弱め、中国が利用する外交的亀裂を生むだけだ。トランプが、同盟国との関係を築き、規律を守ることができれば、勝利は可能だろう。
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関税措置へ考慮すべきこと
シングルトンが所属する民主主義防衛財団は、共和党系でネオコン的な傾向のある米国シンクタンクで、シングルトンは中国担当のシニア・フェローとして、トランプが適切な対応を取れば、第2期政権の最重要課題の1つである先端技術や貿易戦争で中国に勝利し、その優位を恒久的なものにする好機であると論じている。
その背景として、中国が、経済停滞や債務増大、失業増加や高齢化により既に衰退へ向かい、トランプの強圧的で予測困難なやり方に脆弱で、米国が高額の関税を課すのに対して有効な対抗措置が取れないためであるとしている。もっとも、米国の優位を恒久的なものとするためには、より焦点を絞った戦略と規律が必要で、同盟国の信頼を損ねるようなことのない「アメリカ・ファースト」に刷新する必要があるとしている。