そしていよいよ試食。1列に並んで少しずつ食べていく。彼らに倣って私も食べる。普段、ササゲの食べ比べをする機会はなかったので、7種類を1度に食べるのは初めてである。あ、違う、と即座にわかる。火加減など調理の差も影響しているだろうが、柔らかい、味が濃い、皮が口に残るなど、違いを感じる自分の舌に嬉しくなる。それが4番目くらいになると、突然わからなくなった。あれ、最初のと似てるな、あぁ、最初と2番目の違いはなんだっけ、ともはや舌の記憶が交錯し、どの味も覚えていられなくなってしまった。気に入った2品種に投票することになっていたので、何度か並び直して、豆の甘みが強いものともう1種類をなんとか選んだ。
彼らは違った。さすが食べ慣れているだけのことはある。1回ずつ口に運べば、即座に自分の好みを見つけ出して2品種選び切っていた。あとは昼食としてお腹いっぱい食べるのみ。
市場により受け入れられる品種を作っていく
食後、各自が気に入った品種2つに投票して、結果が発表された。どうしてそれを選んだのか、という議論に入る。議論の前半は「おいしかったから」という理由が口々に出た。もっともシンプルで、もっとも重要な感想ではある。その後、みんな控えめなのか、しばし沈黙。ただ、もう少し時間をかけていくと、今度は違う意見が出始めた。粒が大きくて良かった、食感が好みだった、煮崩れしていなくて見た目が綺麗だった、薪の消費が少なくて済むというのもポイントが高い、などなど。
一旦出始めれば、次々と出てくる。彼らは農家なので、自家消費分だけでなく、市場に売って現金収入を得るという視点も重要な要素である。自分たちは消費者であると同時に、供給者でもある。市場ニーズを把握して見合った作物を作っていきたい。そんな視点も加わって、議論が進んだ。
投票の結果は、ポイントの高かった2品種、まずまずの得票数だった2品種、ほとんど票の集まらなかった3品種、というグループに分かれた。意外と好みは似通っているようだ。そのうち2番人気だった品種は、地元の品種で豆の色が赤く、白が好まれるササゲ市場では比較的安価な価格が付けられるものだった。それが実際食べてみると人気が高い。弱点だったはずの色も、炊くと、赤い色が薄まり、他の白い品種は逆にほのかに色づき、炊きあがりの色はほとんど差のない状態になっていた。