たとえば、小学生の頃、クラスに「お調子者」と呼ばれる子がいましたよね。そういった子は、自分がふざけるとクラスメイトみんなが笑ってくれていると思い、快感を覚えます。それでどんどん悪ふざけがエスカレートしたりしますよね。でも、実はクラスメイトでもその子を笑っているのは数人の仲間内だけで、圧倒的多数のクラスメイトや他のクラスの子どもたちは醒めた目でみているということに気がついていない。
つまり、仲間内の友人数人がおもしろがっているだけなのに、彼らのツイッターアカウントをフォローしている人たちみんなが笑ってくれていると思っている。もちろん、こんなイタズラをしてけしからんと感じる人の方が圧倒的です。
もうひとつは、ツイッターのリツイートという機能の怖さです。自分をフォローしている友人しか見ていないだろうと、悪ふざけを投稿すると、瞬く間にリツイート機能によって拡散される。
スタンレー・ミルグラムが行った社会心理学の有名な実験があります。これはネブラスカ州オマハの住人から、何人を経ればボストンの株式仲買人に手紙が届くかを実験したものです。この実験では6人を媒介するとつながることがわかりました。ちなみに、日本で同じような実験を20、30年前に行いましたが、その時は約10人で目的の人とつながるという結果が出ました。
つまり、自分をフォローしている友人に気軽なノリで自分の行為をさらしたとしても、友人がリツイートすることにより赤の他人にも知れ渡ることになり、意図せずに広がってしまう。そこに本質があるのではないかと思います。
ただ、それにしてもちょっと行き過ぎなような気もします。
ーーそれはあると思います。
北折氏:彼らがやらかしたことは確かに悪いことですし、それに対するペナルティは必要だと思います。正当化できない行為で、批判されても反論の余地はありません。しかし、やったこととペナルティのバランスが取れているかは疑問です。彼らの行動に対して、ネット上で当たり前のようにつるし上げたり叩いたりするのは、歪んだ正義感で錦の御旗を掲げているようなものではないかと。社会自体が不寛容になってきていて、ネット上で正義感を武器に見ず知らずの人を叩くのはすごく怖いことだと思いますね。