2025年4月26日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2025年2月21日

 メディアでこうした経歴が披露されると、中国の保護者たちは沸き上がった。SNSには「彼はアメリカ留学組ではないのか。国内で学んだだけでここまですごいことができたとはすばらしい。中国の宝だ」「こんな逸材がいたなんて、やはり、我々はアメリカに負けていない」といった意見がさかんに飛び交った。

 梁氏の会社の主要メンバーである羅福莉氏も1995年生まれ、四川省の田舎出身で、北京大学大学院で修士号を取得した「天才少女」と呼ばれた女性だが、留学は未経験者だ。2人に共通するのは地方出身であること、そして、学歴は高いものの、それほど恵まれた環境で育ったわけではないという、たたき上げの人物であることだ。こうした経歴が、アメリカにライバル意識を持つ人々を喜ばせた。

国が後押し、盛んな企業のAI教育

 上海に住む筆者の知人で、子どもを地元の小学校に通わせている男性も「子どもの学校でもディープシークのことはおおいに話題になったそうです。将来、彼らのような人材になるためにAIをもっと勉強しようという機運が高まっています。これから学校でAIの授業も始まるそうですが、それだけでなく、もっと個人的にも勉強したいという子どもが多いそうです。梁さんのニュースに刺激を受けている証拠ですね」という。

 奇しくも、中国教育省は昨年12月、全国の小学校、中学校、高校でAIの活用強化を指示するという通知を出したと発表した。2030年までにAIを学校教育に普及させるというも目標を立てた。

 同通知によると、小学校低学年でまずAIに触れさせ、中学校で応用技術を学ばせ、高校でも引き続きAIについて学ぶ授業を導入する計画だという。現在は北京、上海、深圳などの大都市にAI関連企業や関係者が集中しているが、子どもの頃からAI教育を実施することによって、AI人材の層を厚くし、全国的に広めたい考えだ。

 こうした政府の方針を踏まえ、企業でもAIに関する教育はさかんだ。ネット企業のネットイースやテンセントなどでは、数年前から小中学生向けのプログラムを実施している。

 ファーウェイは19年から「天才少年プロジェクト」と銘打ったプログラムを実施。数学や物理、AIなどの筆記試験や面接を行って、そこから優秀な学生を選抜し、高額な年俸で雇用する制度だ。すでに同プロジェクトで雇用した人材がいるが、中国政府は「国産」で技術開発を進めていきたいとしており、そうした政府の意向に合ったプロジェクトが今後、他の企業からも次々と計画・実施されていくと思われる。


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