2024年11月22日(金)

ベテラン経済記者の眼

2014年3月18日

 ベア回答の多さが本当に経済の好転につながるのか、という視点から問題提起をした記事も多かった。毎日新聞は3面で「好循環実現に課題」として、消費増税などを考慮すると慎重な見方があることを紹介した。また産経新聞は3面で「試されるアベノミクス」と見出しをとり、春闘での待遇改善だけでは消費の下支えは難しいとして、エコノミストなどの見方を紹介しながら、追加的な政策の必要性を指摘し、日経新聞も同様の記事を載せた。また各紙とも中小企業や非正規社員などへの広がりが十分行われない可能性があることを懸念して、「中小企業に賃上げの波が広がるかどうかが課題だ」と指摘した。

 3月12日の集中回答はあくまで大手企業が中心であり、中小企業などではこれから労使交渉が正念場を迎えるところもある。そうした点におおむね各紙が言及していたのは妥当だったといえる。

横並びはもはや限界

 個別に注目したのは、読売新聞が13日、経済面の連載で「賃上げ崩れた横並び」として、主要産業別にベアの水準が分かれ、横並びの慣行が崩れたことを指摘した記事だった。国内外で競争が激化し、企業業績に違いが出てくる中、賃上げの状況に差が出てくるのは当然だ。しかしこれまで春闘では横並びが意識されすぎていた。ベア春闘となった今年、横並びはもはや限界で、業界ごとに明確な差が出るのは避けられないことを読者に再認識させたという点で有益だったといえる。

 各紙を読み比べてみて気付いたのは、春闘という同じ現象を取材しながら、各紙の扱いは少しずつ異なり、それぞれに注目すべき内容の記事があったということだった。これこそが新聞の本来の役割ともいえる。働く人の生活に密着する経済記事は、書き方によって内容はずいぶん異なるものになり、読む人の印象も大きく違ってくるのだということを、今年の春闘報道からあらためて認識させられた。

「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。


新着記事

»もっと見る