この熱き人々

2014年5月14日

»著者プロフィール
閉じる

吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

 「さすがに深夜営業は少なくなってきましたね。前は午前3時頃帰って朝7時には起きてましたけど、今は午前1時頃には帰るかな。自宅から20分ぐらいなので歩いて来ています。家族旅行なんて行った覚えはないですねえ。集中して仕事して休みもしっかり取るというタイプじゃない。スイッチをずっとオンにした状態にしていたほうがいい。一度切ってしまうと立ち上げるのに手間がかかるし。電気もつけっ放しにしておいたほうがつけたり消したりするより消費電力が少なくてすむといいますよね」

 浮世の楽しみとは無縁と言いながら、けっこう楽しそうにも見える。

 「ひとりだと対人関係のストレスがないから」

 その他の仕事がらみのストレスは、新刊ニュースの「裏だより」で吐き出し、3冊目の本になった頃には、愚痴を通り越して毒づくまでになっているとか。春と秋に集中する学会シーズンには、毎週末、学会の開催地を行商に飛び回る。

 「みんな買う気で来ている人たちの集まりですからね。大きな学会だと2日で100万円とか売れるし、これも気分いいですよ。でも、売れない学会は、全く売れない」

 概ね購買層が把握できる専門書でも、時には思いがけないヒットが出ることもある。

 人間が死んでから骨になるまでの9段階を図にした仏教的な無常観の漂う『九相図(くそうず)資料集成』という8900円の本が3刷まで版を重ねた。日本人の死生観に関する歴史研究書『死者のゆくえ』も新聞の書評欄で取り上げられて4刷を記録した。

 「こういうのがたまに出るから売れない本も出せますけど、欲をかいてはいけない。そう売れるもんじゃないと身に沁(し)みついていますから」

仕事場の書棚には創業時からの書籍が並ぶ。ずっと変わらないシンプルな装丁は、書店でかえって目を引くという

 休みもなく、趣味もなく、ひたすら仕事の20年の日々を支えるのは何かとよく聞かれると言う。それは誰もが自分には決してできないことと思っているからだろう。

関連記事

新着記事

»もっと見る