2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2014年4月17日

昨秋アジア歴訪をキャンセルしたオバマ

オバマ大統領が参加をキャンセルした2013年10月に行われた東アジアサミットの様子(ブルネイ、提供・AP/アフロ)

 だが、ピボットに対する最後のとどめは、オバマ大統領が東アジアサミットへの出席を含む昨秋のアジア歴訪予定をキャンセルしたことだった。地域首脳会議への参加と推進に多大な努力を注いできた後だけに、大統領が東アジアサミットに姿を現さなかったことは、米国の外交政策の不安定さを示唆した。

 外交政策というものは美と同じく、見る人によって評価が違う。だが、筆者の見るところ、オバマ政権はアジア太平洋への長期的シフトについて一度も揺らいだことはない。アジアへのピボットは世界の勢力バランスの変化に根差しているからだ。

 例えば、13年春にシンガポールで開かれたシャングリラ・ダイアログ(英国国際戦略研究所〈IISS〉が主催するアジア安全保障会議)では、チャック・ヘーゲル米国防長官が次第に高まる中国のサイバー攻撃の脅威を取り上げ、サイバースペースにおける「国際規範と責任ある行動」を呼びかけた。

 13年初秋には、日米両国が初の外務・防衛担当閣僚協議「2プラス2」を東京で開き、日米同盟について再確認するとともに、平和に対する日本の積極貢献への支持を謳った。11月には、超大型台風30号「ハイヤン」によるフィリピンの壊滅的被害に対応し、米国は日本をはじめとした主要国の支援を受けながら、人道的危機に直面する同国民を支援する世界的な取り組みを先導した。対照的に、中国は当初表明したわずかな支援金について広く非難され、遅まきながら人道的援助を拡大した。

 その間にも、 米通商代表部(USTR)のマイケル・フロマン代表は、12カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)交渉をまとめようと努力を加速させた。したがって、深刻な財政危機の最中でさえ、米国はアジア太平洋地域への重大な関与をやめたことはない。

 だが、アジアの安全保障環境は悪化し続けた。東シナ海・南シナ海における中国の相手国にあわせた威圧(tailored coercion)は、海上での行動と政治的表明を増やすことによって一方的に現状を変えようとする試みだった。尖閣諸島をめぐる日本との対立であれ、スカボロー礁やセカンド・トーマス礁をめぐるフィリピンとの衝突であれ、軍事力と経済力は決して紛争と無縁でなかった。

 北朝鮮は13年、3回目の核実験の実施で新年を飾り、金正恩第一書記の叔父で最大の後見人とされた張成沢の死刑執行を発表して年を終えた。要するに、リバランスを進める米国でさえ、アジアでの緊張の高まりを防げなかったわけだ。


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