上海での国際会議に出席した、ワシントンポスト紙コラムニストのイグネイシャスが、3月1日付同紙コラムで、習近平の権力基盤が強力であるとの観察を示す一方、経済改革は習近平にとって厄介な問題である、と述べています。
すなわち、中国および西側の専門家は、習近平が、めざましい権力強化を達成したということで一致している。
2012年11月に党総書記、昨年3月に国家主席に就任して以来、習は、精彩に欠ける集団指導体制を、統制と改革のための攻撃的な道具に変えた。中国の学者・蕭功秦は、「習近平は、中国の新しい権威主義の黄金時代に到達している」と、昨年11月にニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで述べている。
太子党の一員として習は、一党支配の社会において、あらゆる権力の梃子を用いて来た。国家安全部のトップ、国営石油会社、その他、以前は不可侵であった権力中枢に対して反汚職キャンペーンを打ち上げ、裕福で傲慢になった地方の共産党指導者には、トップダウン式の規律を課そうとした 。
習の改革は、矛盾の典型である。習は、市場の力は中国経済にとって決定的な役割を持つと言う一方、国営企業は指導的な役割を持つ、と言っている。この上海での会議(注:Stockholm China Forum)で中国の当局者は、2つの間には明らかに矛盾があるが、両者とも変化を封じ込めようとする殻に穴をあける企図である、と言っている。
この当局者は、「共産党によって率いられた改革が党の力を弱めると考えるべきではない」と強調した。正反対に、習は、党の力を高めることを望んでいる。
習への権力移行は、当初、うまくいっていないように見えたが、習は、2012年11月に最終的に党の指導者として舞台に登場した時、断固とした就任演説をした。彼は、「党内には解決すべき多くの問題、特に汚職の問題がある」と言った。習は、胡錦濤を中央軍事委員会から排除した。ほどなくして、習は、「中国の夢」を発表し、その中には「強い中国」が含まれていた。
習は、昨年11月の3中全会で、改革構想を加速させた。経済改革についての「指導小組」と、中国の巨大な軍事および公安官僚を監督する、国家安全委員会の、2つの特別委員会を作った。3中全会では、習に、一層強力な統制権が与えられた。
習の課題は、中国経済の成熟を監督することである。過去数十年間の「超高速成長」は減速しつつあり、中国は、輸出主導の爆発的成長から、もっとバランスの取れた消費者主導のモデルに移行しなければならない。ペンシルベニア大学による最近の報告書は、「賃金の上昇、人口の高齢化、生産性が落ち非効率性を増す国営企業といった問題を抱え、中国は、中国の夢を達成するには新しい経済モデルを必要としている」と指摘している。