2024年11月22日(金)

【WEDGE創刊25周年特集】英知25人が示す「日本の針路」

2014年4月24日

 介護では最適な介護サービスなどをナビするケアマネージャーがいるが、この包括版と考えればよい。今も主治医はいるが、健康を守る主「護」医とは言い難い。「この病気は私が治す」という意識は強くても、ケアサイクルを回すためのコーディネートやナビはできないからだ。医師より「目の前の患者を護るべし」と教育されている看護師のほうが適任かもしれない。当然、食や運動などの生活に即した知識も必要だろう。

 さらに、診療報酬体系の見直しが必要だ。現在は診療行為ごとに定められた価格を積み上げていく形式だが、ここに「ケアサイクル全体での実績を評価する」という発想を導入する。たとえば、健診受診率やリスク管理率、合併症発症率、生活機能評価といった指標でケアサイクル全体を評価し、良好な実績のところにより多く支払う。医師とて診療報酬に影響される生き物である。

 治療より健康を重視する報酬体系に変えれば、現行の「病気待ちの受動型医療」よりも、予防やリハビリに力を入れるようになるだろう。また、健康生活を支援するサービス産業が活発になり、技術開発の方向性も変わるはずだ。こうして健康管理の達成度は上がり、健康長寿の人が増えていくのが理想のモデルだ。

 これらの改革案は、既に一部が実現に向かっている。健保が健診やレセプトを活用して加入者の健康を守る、データヘルス計画が2014年度から始まる。産業化に重きを置いた研究開発も振興されている。

 予防や健診、治療、介護といったケアサイクルの各パーツは発展を遂げてきた。あとは全体設計である。どの先進国も夢見る「健康長寿を安く簡単に達成する」最先端モデルを日本は必ず構築できるし、私もこれに尽力していきたい。

WEDGE5月号 創刊25周年記念特集 「25年後を見据えた提言」
英知25人が示す「日本の針路」
◎経済、企業
石黒不二代(ネットイヤーグループ社長兼CEO)「ネットが動かす未来のマーケティング」
浜田宏一(米イェール大学名誉教授、内閣官房参与)「“成熟した債権国”化する日本の今後の針路」
村上太一(リブセンス社長)「起業家育成へ教育・選挙改革を」
ポール・サフォー(未来学者、デジタルフォーキャスター)「シリコンバレーの強みは何か」
ヒュー・パトリック(米コロンビア大学名誉教授)「日本人よ もっと外の世界へ飛び出せ」
入矢洋信(トーヨー・タイ社長)「海外の事業は、まずはやってみる、やらせてみる」
千本倖生(起業家、元イー・アクセス社長/会長)「起業家は描きうるなかで最大の夢を持て」
◎政治、国際関係、安全保障
中西輝政(京都大学名誉教授)「25年後の米中と日本がとるべき長期戦略」
井上寿一(学習院大学長/法学部教授)「高まる“大統領型”首相待望論 将来の日本政治の姿」
ジェームズ・ホームズ(米海軍大学准教授)「軍事的ジレンマに陥る中国 日米のチャンス」
鈴木英敬(三重県知事)「地方分権の議論は発想が逆」
小谷哲男(日本国際問題研究所主任研究員)「太平洋を“開かれた海”へ “関与”戦略への転換」
山田耕平(レアメタルトレーダー)「草の根国際協力を国益に繋げ」
◎教育、人材活用、医療、司法
松田悠介(Teach For Japan代表理事、京都大学特任准教授)「日本の教育現場に課題解決能力の高い人材を」
菊川 怜(女優)「大学で学ぶということ」
駒崎弘樹(認定NPO法人「フローレンス」代表理事)「“イクメン”がデフォルト化している日本を創る」
亀田隆明(医療法人鉄蕉会・亀田メディカルセンター理事長)「日本は世界の医療産業国を目指せ」
山本雄士(ミナケア代表取締役)「さらば“ブラック・ジャック”名医論」
麻生川静男(リベラルアーツ研究家)「日本人のグローバルリーダーを育てるために」
久保利英明(日比谷パーク法律事務所代表弁護士)「世界に立ち遅れた日本の司法界 改革への3提言」
◎復興、観光、スポーツ、芸能、暴力団
星野佳路(星野リゾート代表)「25年後に大転換迎える日本の観光 旅館が切り札に」
宮本慎也(元プロ野球選手)「野球界に必要な地盤固め」
三遊亭圓歌(落語家/落語協会最高顧問)「古き良き“寄席”の笑い」
溝口 敦(ノンフィクション作家、ジャーナリスト)「衰微する暴力団、台頭する半グレ集団」
西本由美子(NPO法人「ハッピーロードネット」理事長)「福島浜通りへの帰還」

◆WEDGE2014年5月号より









 

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