イスラエルの存在はまた、BDS(ボイコット、投資引き揚げ、制裁)運動の高まりで脅かされている。過去、イスラエルは特に米にこういう動きを止めるように頼れたが、西側のユダヤ人は、今や条件反射的イスラエル支持ではなくなっている。パレスチナ占領は人権尊重と相いれないと考えられている。イスラエル・ロビーの力も衰えている。
一方、イラン人の海外共同体(500万~700万)は、イランの民主化や米国との関係改善を主張する勢力として強くなってきている。
イラン生まれのイスラエルの人気歌手リタ・ヤハンフォルズは、「この世で私は砂漠の雑草のように孤独で捨てられた」と歌っているが、イランが改革に失敗し、世俗イスラエル人がイスラエルの神政化を阻止できないと、そういうことになりかねない、と論じています。
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この論説が示している、イランが宗教的支配、神政国家から離れつつある一方、イスラエルは宗教勢力が強くなり、神政国家のようになりつつある、という視点は、興味深いものです。そして、論説は、イランとイスラエルにおける人口構成上の変化、それにともなう文化的変化の大きな動きの傾向を良く捉えています。
この論説が指摘するような傾向があることは否定しがたいと思います。それがどのくらい強いものであるのか、それほどでもないのか、評価するのはなかなか困難なことですが、この傾向が人口構成の変化によってもたらされている以上、この傾向の逆転はかなり難しいと考えて良いのでしょう。
イランについては、我々にとって、良い方向への変化ですが、イスラエル・パレスチナ和平については、悪い方向への変化と言えます。こういう背景を考えると、中東和平の達成を急ぐ必要があり、場合によっては、和平を双方当事者に押し付ける以外に選択肢が無い、ということになるかもしれません。
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