2024年11月25日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年5月21日

 米スタンフォード大学フーバー研究所イラン研究部長のアッバス・ミラニと、イスラエルのハイファ大学講師イスラエル・ワイスメル=マノ―ルが、4月11日ニューヨークタイムズ紙で、イランが世俗化、穏健化する一方、イスラエルは宗教右派が台頭し、神政国家化しつつある、と論じています。

 すなわち、イスラエルとイランには共通点が多い。アラブ地域での非アラブ国であり、1950年代には、ベングリオンもシャーも世俗的民族主義の代表であった。1979年のイラン革命はイランの世俗主義を排除した。世俗主義はイスラエルでは今脅威にさらされている。

 イランとイスラエルは外部世界、特に米国との関係で新しい段階に入っている。7年間にわたる国連安保理の制裁を経て、イランの高官は制裁が経済の破局につながると理解してきている。

 他方イスラエルでは、宗教的右派が公然と米を攻撃している。ヤアロン国防大臣は、ケリー国務長官を「執拗」と非難し、ベネット経済大臣はケリーを、反ユダヤ主義の「代弁者」としている。イスラエルの世俗主義者は、自国が過去のイランに似てきていると心配している。

 石油のおかげで、イランの宗教的指導者は政権の座に居られたが、制裁は効果を挙げた。国民はアフマディネジャドに飽き、経済や西側との関係改善を掲げるロウハ二を選んだ。ロウハ二の台頭は、文化や人口構成の変化の結果でもある。イランのエリートは年老いた男性であるが、女性は「ジェンダー・アパルトヘイト」政策にもかかわらず、多方面で活躍している。インテリや芸術家は人民主権を主張し、人権や宗教的寛容は反イスラムと言う議論を受け入れていない。人口の60%以上が30歳以下で、個人的自由を信じている。ハメネイが非イスラムの「文化侵略」がもっとも心配と言うはずである。

 他方、イスラエルでは、ハト派はタカ派に押されている。それは、安全保障情勢の変化の反映であるが、その背後には、宗教面や人口構成の変化がある。ユダヤ正統派政党は議会の約25%を占め、イスラエルを神政国家にしようとしている。正統派の人口は増加している。

 人口構成の変化は、イランでの神政国家、イスラエルのリベラリズムを共に変えて行くだろう。ユダヤ正統派は和平反対であり、時と共に、和平のチャンスは小さくなる。


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