台湾人の犠牲者への考慮も
第二次世界大戦で亡くなった日本兵は240万人とされる。藤原彰・一橋大学名誉教授の研究によれば、うち4割、100万人が戦闘による死亡だった。
バシー海峡での死者が10万人だとしても10分の1が台湾から目と鼻の先の海に消えていったことになる。驚くべき多さである。
難しいのは、台湾人も日本兵として海難に巻き込まれたことや、戦争自体は二度と繰り返してはならない過ちであったとの評価が定まっていることだ。慰霊の思いと戦争への反省が、日本とは異なる事情を抱える台湾においては道義的なバランスを保って行われなければならない。
前夜祭で日本台湾交流協会高雄事務所の奥正史所長はこんな話をした。
「屏東県の牡丹郷には、日本が台湾に出兵した1874年の古戦場がある。高雄市の旗津区には戦争と平和記念館もある。バシー海峡の慰霊に台湾を訪れる人には第二次世界大戦の記憶とともに、台湾南部の戦争をめぐる史跡も訪ね、その記憶を風化させず、語り伝えてほしい」
この言葉にあるように、日本人の犠牲を強調するだけでなく、台湾の地で慰霊をするのであれば台湾人の犠牲者も考慮する慰霊であってほしい。
