2014年5月24日、東シナ海の日中中間線付近で、監視飛行中の海上自衛隊の画像情報収集機と航空自衛隊の電子測定機に対して、中国空軍戦闘機が相次いで異常接近した。一時、50メートルと30メートルまで接近したという。
「10メートル前後まで接近」はあり得ない
小野寺五典防衛大臣は、翌日の25日午前、この異常接近について、「常軌を逸した近接行動だ」と批判した。一方で小野寺大臣は、「日中の防衛当局間で、海上での安全確保について話し合うことは重要で、不測の事態を回避するためにも、海上連絡メカニズムの早期の運用開始を目指して、中国側に働きかけていく」とも述べている。現場を理解する両国の制服間の対話がますます必要とされているのだ。
しかし、これに対する中国の反応は、中国が2012年以前に戻ったかのような印象を与える。中国国防省の耿雁生報道官が29日の記者会見で、「日本が危険な接近をし、我々の正常な飛行活動を妨害している」と反論したのだ。「やったけれど、それは相手が悪いからだ」という旧来の理屈では、今後もこうした危険な行為を繰返す可能性があるということになってしまう。
耿報道官は、昨年11月に自衛隊機が中国軍機に「10メートル前後」まで接近したと主張する。中国が東シナ海における防空識別圏の設定を公表した昨年11月23日、防空識別圏内をパトロール中の中国空軍の偵察機Y8に対し、航空自衛隊の戦闘機F15が2機で追跡監視した際に起きたという。しかし、10メートルという距離は、実際の航空機の操縦を知らない者の発言としか思えない。
低速では機体が不安定になる戦闘機
今回、中国空軍機が接近した30メートルというのは、機種によって異なるものの、軍用機がタイト・フォーメーションを組んで編隊飛行する際の機体間隔と大差はない。
フォーメーションを組む際には、リーダー機及び列機全てが編隊を組む意図を持って飛行している。それでも、若いパイロットが初めてフォーメーション訓練を実施する時には、近接する機体があまりに近く感じるので、なかなか正しいポジションにつくことが出来ないことも多い。