チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年6月5日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 一方で、中国海軍のマナーは、徐々にではあるが、国際的な常識に沿ったものになりつつある。2013年12月19日、ヘーゲル米国防長官は、中国艦が米艦の100ヤード(約91メートル)前方で進路に割り込んだことを明らかにした。

 この時、米海軍のイージス巡洋艦「カウペンス(Cowpens)」は、中国艦との衝突を防ぐために緊急回避をしている。同長官は、国防総省での記者会見で、同月5日に南シナ海の公海上で米艦艇に異常接近した中国艦艇を「無益で無責任だ」と批判した。

 中国艦艇の針路割り込みは、非難されるべき危険な運動である。しかし、この時、中国艦艇から無線による呼びかけが行われたと聞く。米海軍には、「これまで中国海軍から無線の呼びかけが行われたことはなく、大きな進歩だ」という声もある。無線交信は、誤解とそれに基づく不測の事態を回避する第一歩なのだ。

 海軍は、外国海軍との交流の機会も多く、海賊対処活動等、海外での活動の場も与えられている。さらに、中国海軍は、2000年代初めには「真の海軍」になる努力を始めている。現海軍司令員の呉勝利上将は、南海艦隊司令員だった当時、「海軍は唯一の国際軍種である」と述べている。

 しかし、中国空軍は、こうした意識が低い。極少数ではあっても、素養も技量も低いパイロットが偏狭な愛国心に基づいて蛮勇を振るうと、これを抑えられない可能性が高い。

これまで見られなかった「勢いづく空軍」

 現在、中国空軍が調子に乗って蛮勇を振るうのには、もう一つの理由が関係している。中国指導部の支持である。ここ数年、中国空軍内部には不満が溜まっていた。予算配分を含め、空軍が不当に抑え込まれていると考えていたのだ。

 状況が変わったのは、2013年後半である。11月の防空識別圏設定の宣言も、本来は、中国の目標を「日中開戦」から「国際社会における地位の調整」にすり替えて米国を相手とし、中国国内の対日強硬派の勢いを削ぐことを狙ったものであるが、一方で、空軍に存在感を示す格好の口実を与えることにもなった。

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