チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年6月5日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 しかも、フォーメーションを組む際には、機体間で高度差を設ける。何かあって不意に機体同士が近接しても、高度差があれば衝突しないからだ。

 それほど、大気中にある航空機は不安定なのである。気流の影響で機体は簡単に動揺する。フォーメーションを組んでいる間、列機はリーダー機に対して正しい位置を保つことに神経を集中する。リーダー機は列機及び編隊全てのことを常に気遣いながら飛ぶ。旋回する際も、通常旋回時に使用するバンクより小さくし、スムーズな動きを心がけるのだ。

 しかし、中国空軍機の異常接近はフォーメーションではない。この距離まで近接すること自体、常軌を逸した行動であると言える。機体が少し動揺するだけで衝突する危険性があるのだ。

 さらに、通常、異機種間でフォーメーションを組むことはしない。機種によって、飛行特性が異なるからだ。特に戦闘機は高速で飛行するよう設計されており、低速では機体が不安定になる。コントロールが効かなくなるのだ。一方の情報収集機等は、低速でも安定して飛行できるよう設計されている。

 2001年4月に米海軍の電子情報収集機に中国軍戦闘機が衝突したが、それ以前、中国軍戦闘機が異常に近い距離で米軍機の速度に合わせて飛行しようとして、機体が不安定になっている状況が記録されている。こうした状態で飛行すること自体、中国空軍のパイロットの技量は極めて低いと言える。

 米国のヘーゲル国防長官は、5月31日、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議で、中国の東シナ海及び南シナ海における行動を批判し、その上で、一方的に防空識別圏を設定したと宣言したことをアメリカは認めていないとけん制した。さらに、米国はアジアの同盟国・友好国への関与を続けると強調した。

 この米国の態度は、2013年12月当時のものとは全く異なる。当時の米国は、「防空識別圏の設定自体は問題がない」という立場であった。

 「米国のアジアへの関与」は、中国が最も避けたい状況だ。中国空軍機の非常識な行動は、米国の中国に対する態度を硬化させ、アジアへの関与を強めさせる、正にオウン・ゴールであると言える。

経験不足の中国空軍

 なぜ今、中国空軍はこのような非常識な行動を採ったのだろうか? 一つには、中国空軍に国際的な常識に触れる経験が不足していることが挙げられる。

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