2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年6月12日

 5月5日付け仏ル・モンド紙で、仏国立社会科学高等研究学院(EHESS)のSebastien Lechevalier日仏財団理事長が、2012年末に総理として再登場した安倍晋三氏は、彼に成功のチャンスはないと思っていた国民や専門家達を驚かせる政策を次々と実行している、と論じています。

 すなわち、1990年代後半から続いた長いデフレから日本を脱却させた総理として、安倍氏の名は歴史に刻まれるだろう。安倍氏は、保守派ナショナリストとして知られているが、彼は、成長と信頼を取り戻すという国民の期待に応えるため、優先順位を変えた。そして、経済政策を刷新した。

 それが「アベノミクス」である。少なくとも、最近まで、アベノミクスは、成長と価格上昇をもたらし成功した。もちろん、アベノミクスが奇跡を起こしたわけではない。新しい方法の1つは、2%のインフレ目標を設定した金融政策である。が、それ以上に驚くのは、首尾一貫して分かりやすい政策を提示しようとしていることである。

 もう1つの驚くべき成果は、給与政策である。15年以上も、安倍氏の前任者達は、デフレの根源である給与削減政策に終止符を打つように日本企業を説得することができなかった。安倍氏は、財界に好意的政策を示し、代わりに、大企業に対して、昇給を与えるよう圧力をかけることをためらわなかった。

 この政策で、安倍氏の人気は上がった。50%以上というのは、政治への信用を失った国家では例外的数字であり、欧州の首脳達が羨むものも無理はない。

 が、経済成長のみが、日本が直面している課題ではない。2011年3月の福島原発の事故から3年経ち、エネルギーと環境問題は、第1の課題である。問題は、単に原発を破棄して人と環境への被害を止めることではなく、経済成長の要求に応えつつ環境に配慮した斬新なエネルギー政策を実施することである。

 2番目の課題は、社会保障である。問題は、共通の目標に向けて国民の活力を結集するような制度を構築し、若者に自信を取り戻すことである。そのためには、社会保障の要求に応えつつ、同時に、限度を設けることも必要である。

 日本の財政赤字は、国内総生産の200%以上になるが、安倍政権で取られた措置は消費税の増税で、5%から8%、2015年には10%と、かなり低いものである。

 3番目の課題は、人口問題である。日仏両国は、1980年代には、1.8人の出生率であったが、その後の異なる歩みにより、現在、日本の出生率が1.4人なのに対し、フランスは2人以上となっている。ここでも、フェミニストとしては知られていなかった安倍氏が、社会における女性の地位向上を掲げ、我々を驚かせた。この分野に関しては、日本はフランスの成功を参考にしたら良いだろう。


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