2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年3月21日

 2月8日号の英エコノミスト誌は、ドイツはこれまでの消極姿勢を変え、国力に見合った積極外交を打ち出すことになるかもしれない、との解説記事を掲載しています。

 すなわち、ドイツは第二次大戦以降、ほぼ一貫して外交政策を米、仏、英に肩代わりさせ、平和主義の名の下に本格的軍事活動を控えてきた。

 しかしこのドイツの自己抑制は同盟国から次第に責任逃れと見られるようになってきた、とガウク独大統領は指摘する。ドイツ外交関係者は以前から米、仏、英がドイツへの苛立ちを募らせているのを感じてきた。とりわけ、2011年に国連安保理のリビア攻撃決議を支持しなかったことは、西側諸国を怒らせた。

 ドイツは対外的にもっと積極的になるべきだという考えは、シュタインマイヤー新外相やフォン・デア・ライエン新国防相も共有している。そうした中、メルケル首相は自らの考えを明らかにしていないが、これは皆に意見を言わせ、形勢を見極めた上で決断を下す彼女のいつものやり方だ。しかし、基本的に賛同していなければ、メルケルは閣僚2人にそうした態度表明を許さなかっただろう。

 では「さらなる関与」は何を意味するのか。シュタインマイヤー外相が先ず目指すのは、ユーロ危機の中で財務省に行ってしまった対EU関係の管轄を外務省に戻すこと、そしてフランスとの協力関係の改善だ。ここでは、ドイツがフランスのアフリカ・ミッションを支持する代わりに、ドイツ主導によるEUの東欧政策をフランスが後押しすることが期待されている。もっとも、そうなると、ドイツは厄介なウクライナ問題に対峙しなければならなくなるだろう。

 ライエン国防相はさらに踏み込んで、ドイツが重要な役割を果たし、より統一的な欧州安保政策を実現することを望んでいる。ただ、これは現時点ではほぼ実現不可能なので、先ずは、ドイツ国内で軍事行動への心理的抵抗を取り除こうとしている。

 ただ、ライエン国防相が実際に提案しているのは、マリに派遣する軍事訓練要員を今の100人から250人に増やす、あるいは、凄惨なイスラム教徒対キリスト教徒の戦いの場となった中央アフリカ共和国に負傷者救援機を送るといったものだ。

 これについて、カーネギー財団の専門家は、ドイツにとってより重要なのは、近年、経済的理由から中国重視=東南アジアや日本軽視となっているアジア政策の転換と、EUがもっと一丸となってロシアに当たるようにすることだ、と言っている。

 いずれにしても、独指導層のこうした動きは大きな変化と言える。背景には、もはや米国に欧州の問題を解決してはもらえないという認識と、ドイツの新たな自信がある。69年間罪を償ってきたドイツは、今や「われわれの知る中で最良のドイツ」になったとガウク大統領は言う。


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