この熱き人々

2014年8月15日

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吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

 「こういう仕事は、初めてです。僕の仕事は基本的にはひとりで作品を作ることだけど、展覧会にはたくさんの組織がかかわる。僕は組織のリーダーなんて、全く興味がない。統括したり差配しないリーダーだったらどんな国際展になるのかってことに興味が出てきて、4カ月ぐらい悩んで引き受けることになったんですが、やっぱり困りましたね。引き受けてから、キュレーター的な知識もなく、展覧会の作り方も知識がないことに気がついた。でも、白いキャンバスに絵を描く感じで自分なりに進めてきました。むしろ素人でありたいと思って」

 まず、トリエンナーレという「作品」のテーマを「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」と決めた。本を読むことも持つことも禁止された近未来を描いたレイ・ブラッドベリの『華氏451度』という小説からのキーワードに、森村が込めた思いは何なのか。

 「本が焼かれるなど言論や表現の自由が奪われるというのが一方にあり、もう一方には沈黙の深さがある。いろいろと話したり行動する人がいる一方で、あえて話さない道を選んだ人、絶句して何も言えなかった人など沈黙している人がいる。でも、沈黙の広がりは情報化社会では記録されない、反映されない。黙っているとゼロ。それが忘却の海。表現というと、語る、書く、描く、形にすることだと思うけど、逆の場合もある。絵にも言葉にもならない世界もある。横浜美術館の入り口で巨大なゴミ箱が迎えます。失敗作や役に立たないとされたものが入っている。そこで頭の中をひっくり返してもらうことから始めたい」 

 子ども用のカタログも作る。タイトルは「たいせつなわすれもの」。展覧会の音声ガイドは森村自身が務める。

 「企画した森村の生の声のほうが、思いが伝わるかもしれない。わかろうなんて神妙にならないで、楽しんでもらいたい。僕だって、ほぼわかっていないんですから。え~っ、何これ! って言ってもらえばOKです。それで『ここがおもろいんや』『あ、そうなんや』でいいんです」

 トリエンナーレについて語る声が熱を帯びてくる。すでにディレクターになりきっているというか、完璧に入り込んでいるというか。

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