立花容疑者の「竹内元県議黒幕」論はまったく根拠のない一種の陰謀論だが、昔は何年もかかって浸透していった陰謀論が高度情報社会には数日にして蔓延してしまう。斎藤知事現象の最大の教訓はこの点ではないか。
再選1年で正常化していない兵庫県政
「アルゴリズム(algorithm)」の直訳は「一定の問題を解決する手順」である。インターネットの世界では、検索する人に最適の結果を出そうとしてくれるという意味になる。便利ではあるが、意識して検索しないとある種の論調が大勢であるかのように勘違いしがちになってしまう。
最近、「エコーチェンバー(エコーが出る部屋)現象」という言葉をよく聞く。SNSの世界で同じような意見の人ばかり集まるインターネット空間が形成されてしまう。インスタグラムで位置情報が共有できることは知られているが、その結果、一定の地域に限る自治体の選挙では効果を発揮する。
SNS等で最初に情報を流す側はヒット件数を稼ぐことを競っているので情報の真偽より人々の耳目を引くことを重視する。日本人に付和雷同型の人間が特に多いとは思わないが、協調性に優れているという説は理解できる。
政治家の選択については特に、付和雷同せずに自分で判断する習慣が大切だ。陰謀論ではないが「日本は必ず勝つ」という主張を信じて第二次世界大戦に突入し、なかなか終戦に持ち込めず多くの人命を失った現代史を日本人は再認識すべきだ。
斎藤知事は、内部告発者(元県民局長)の私的情報を漏洩させた問題を受けて、自らの給与を減額する条例改正案を県議会に提出したが、県議会は「給与カットで幕引きにすべきではない」といった反対意見が多数出され継続審査になっている。
この情報漏洩問題については、斉藤知事らの地方公務員法違反容疑の告発についての捜査は今でも続けられている。再選から1年を経て、いまだに県政は正常化していない。このような混乱が各地で続出しないよう望みたい。
