2024年11月23日(土)

ベストセラーで読むアメリカ

2009年6月10日

 Physically, he was an amalgam of JFK and Reagan with an intimidating heft of burly Theodore Roosevelt thrown in. (p216)

 「体つきはJFK(ジョン・F・ケネディ)とレーガンを足して2で割ったようなもので、たくましいセオドア・ルーズベルトの威圧するような迫力が備わっていた」

 若き悲劇の英雄である35代大統領のJFKの説明は不要だろう。俳優出身で大柄かつハンサムな風貌を持ち、小さな政府でアメリカ経済を復活させた第40代大統領のレーガンは、今でも保守派にとってはヒーローである。26代大統領のセオドア・ルーズベルトは強い大統領の象徴として今でも尊敬と人気を集める。

「ホワイトハウスは国民のものだ」

 もちろん、偶像化するだけではない。大統領がホワイト・ハウスに帰ってきた場面の次の一節には、アメリカ人らしい批判精神が出ていて、思わずニヤリとさせられる。

 All doors opened for the leader of the free world and he strode into the White House like he owned it. Which unofficially he did. Though financed by the American taxpayers, it was really his house, his chopper, his jumbo jet. No one got to come for a visit or go for a ride if he didn’t say it was okay. (p214-215)

 「自由主義世界のリーダーのためにすべてのドアが開かれ、彼はホワイト・ハウスに足を踏み入れた。あたかもホワイト・ハウスを自分で所有しているかのように。非公式にはそうなのだ。アメリカの納税者がカネを出しているにもかかわらず、実際のところ彼の家だし、ヘリコプターもジャンボジェットも彼のものだ。彼がOKを出さなければ、だれも来られないし出かけられないのだ」

 主人公のショーンと大統領夫人のジェーンがホワイト・ハウスで言い争いになった際の台詞も面白い。「私の家から出て行って」と言われたショーンが、言い返した言葉がふるっているのだ。

 “Fine. But just remember one thing, Jane. It’s not your house. It belongs to the American people. You and the hubby are just renting.” (p433)

 「いいとも。しかし、ジェーン、ひとつだけ忘れないでくれ。ここは君の家ではない。アメリカ国民のものだ。君と亭主はただ借りているだけなんだぜ」

 本書を執筆したのは、支持率が落ちる一方だった前ブッシュ大統領の政権末期にあたる2008年だから、ブッシュ大統領に対する不満が込められているとみるのは考えすぎだろうか。

 さて、いったいなぜ犯人一味は何のために、大統領の姪を誘拐したのか。そして、なぜ姪なのか。ショーンとミシェルの名コンビは、何を糸口に真相に迫るのか。姪を無事に救出できるのか。荒唐無稽ながら、ハラハラどきどきのジェットコースターのような読み物を求めている方はご一読あれ。

 

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