Warren G. Harding had been president and he and his mistress had been found out by Mrs. Harding. They had taken refuge in a closet in the White House and the angry First Lady had attempted to chop down the door, allegedly with a fireman’s ax. The Secret Service had to delicately relieve her of the weapon and Harding had survived. (p358)
「ウォーレン・G・ハーディングは大統領だった時に、愛人と一緒のところを妻に見つかってしまった。二人はホワイト・ハウスのクローゼットに逃げ込み、怒り狂ったファースト・レディは消火作業用の斧でドアを打ち破ろうとしたと伝えられている。シークレット・サービスは夫人から武器を丁重に取り上げざるをえず、ハーディング大統領は命拾いした」
日本人の間ではほとんど無名に近いハーディング大統領は、1920年代に実在したアメリカの第29代の大統領だ。遊説先のサンフランシスコのホテルで任期の途中で死んだことでも知られる。同行していた夫人が検死解剖を拒否したため、はっきりした死因が分からずじまいで、愛人問題で怒っていた夫人が毒殺したとの説があることも本書は続けて紹介している。
各大統領に対する大衆のイメージ
ちなみに、大衆文化が花開いた20年代のアメリカの社会風俗と大恐慌の始まりを描いた古典的な名著「オンリー・イエスタデイ」(F.L.アレン著、藤久ミネ訳、ちくま文庫)の中にもハーディング大統領について次のような記述が出てくる。
「彼(ハーディング大統領のこと、評者注)の私生活には安っぽい色恋沙汰がいくつかあって、彼の愛人の告白を読むと、大統領選挙の一年ほど前に生まれた彼の私生児を養育していることを、承認するように申し立てている。いかがわしいホテルや上院事務局(中略)、さらにホワイト・ハウスの執務室の洋服ダンスの中でさえ密会したいという、事件の卑劣さは驚くべきものである(後略)。」
当然ながら、大統領はアメリカ人にとっては特別な存在で、その時々の時代を象徴するリーダーとして頭に刻まれていると同時に、過去の特定の大統領にはそれぞれ大衆の記憶としてある種のイメージがつきまとう。
では、ハーディング大統領はスキャンダラスで無能というレッテルが貼られているのとは逆に、アメリカ人がいいイメージを抱いている大統領とはだれなのか。それも、本書First Familyの別の箇所に出てくる、登場人物の1人である大統領の風貌の説明から読み取れる。