2025年12月11日(木)

デジタル時代の経営・安全保障学

2025年12月10日

 ドロップキャッチで取得された中古ドメインには、新規ドメインにはない大きな利点がある。まず、過去に人気を博したウェブサイトのドメインには、すでに検索エンジンでの評価(SEO価値)が蓄積されている場合が多い。こうしたドメインを取得することで、新規サイトよりも短期間で検索上位表示が可能になる。

 また、ドメインの「年齢」も評価指標の一つとされる。長く運用されてきたドメインは、それだけで検索エンジンからの信頼を得やすい傾向にあるのである。

 さらに、以前のサイトをブックマークしていたユーザーや、URLを直接打ち込んでアクセスしてくるユーザーからのトラフィック(アクセス数)をそのまま引き継げることも大きな利点である。ドロップキャッチ自体は違法行為ではなく、中古ドメインを活用することにより、たとえばアフィリエイトサイトなどで収益を上げることも容易になる可能性がある。

 一方、悪意ある目的でのドロップキャッチも増加しており、詐欺の手口に使われることもある。たとえば、以前は地方の公共団体や、名の知れた企業が使っていたドメインを取得し、そこに本物そっくりの偽サイトを構築する。利用者は、見覚えがあり信頼できそうなドメイン名であることから警戒心が薄れ、IDやパスワード、クレジットカード情報などを安易に入力してしまう。

社会に混乱を与えるツールにも

 ドメイン名という、本来サイトの信頼性を担保するはずの要素が、逆にユーザーを罠にかけるためのカモフラージュとして機能してしまうのである。近年、厚生労働省のサイトがFX勧誘サイトに変貌していたり、「Go To Eat」のサイトが「パパ活」情報サイトになっていたりと、大きな問題になった事例も増えている 。

サービスが終了した東京都の「Go To Eat」サイト。他の都道府県のものには、全く異なるサイトとなっているものもある

 さらに、ドロップキャッチの悪用は、意図的にニセ情報を流布し、社会に混乱をもたらすツールにもなり得る。たとえば、自治体のドメインを取得して特定候補の利益につながるような政治的なプロパガンダを流したり、災害情報などの人命が関わるシビアな領域でニセ情報を流したりといった具合である。

 商業的な目的での悪用も考えられ、競合他社が運営していた製品レビューサイトのドメインを取得し、自社製品を絶賛する一方で、競合製品には不当に低い評価を与える記事を量産することもできるだろう。


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