2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年6月30日

 この取引は、当面、習近平にとっても都合が良い。中国はガスを必要としており、また、ロシアは国連での便利な同盟国でもある。中国も、ロシアと同様に、現在の国際システムは西側に有利過ぎると見ている。

 安倍総理はロシアに働きかけて、中国を牽制することが可能と考えている。安倍総理は、日露関係を「正常化」すべき時が来ていると計算している。ロシアは人口が急減しているシベリアでの中国人の増大に懸念を抱いている。プーチンがクリミアを併合したように、中国がロシア領内の中国人について治外法権を要求する可能性もある。

 以上のような対決と再編の構図は、小国がらみの衝突で更に複雑になっている。中国は南シナ海の領有権問題でベトナム、フィリピンと激しく対立している。韓国は、日本の自然な同盟国であるべきだが、安倍氏が日本の過去の罪を認めようとしないとして、中国に接近しつつある。

 この地域では、急速な軍事力の増強が見られる。中露両国は国防費を二桁台で増額している。インドも、経済再生が実現すれば、軍事費を増強するだろう。安倍総理は、軍事力の展開を制約して来た憲法解釈を変更し、中国に対抗する安全保障同盟ネットワークの形成を目指している。

 危険な歴史論争に火がつき、領土紛争解決の国際的メカニズムも不在のまま、この地域は一触即発の状況となっている。当面は米国が状況を見守っている。

 多くの同盟国は米国による安全保障の永続性に疑問を抱き始めている。中国の戦略は、米国を西太平洋から追い払い近隣諸国から朝貢を求めることである。

 東京の友人がナショナリズムの何処が悪いのかと質問した。愛国心はもちろん結構であるが、ナショナリズムについては欧州の血にまみれた歴史が回答になる。但し、アジア4大国の首脳に、欧州の歴史をひも解く時間があるかは疑問である、と論じています。

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 上記は、東アジアにおける国家間の対立構図を紹介し、ナショナリズムによるパワー・ゲームの危険性を指摘した論説です。


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