2025年12月22日(月)

BBC News

2025年12月22日

恒例の年末記者会見でBBCの質問に答えるプーチン大統領(19日、モスクワ)

スティーヴ・ローゼンバーグ BBCロシア編集長

記者はしょっちゅう、各国首脳に質問をする。

大したことではない……はずだ。

しかし、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に質問するというのは、どういう感じなのか。相手はウクライナへの全面侵攻を命じた大統領。英情報部(MI6)長官から「混乱を輸出」すると非難されて間もない国の指導者だ。

しかも、その相手に質問するのはテレビの生放送中で、何百万ものロシア国民が見ているのだ。

責任は大きい。へまはしたくない。

「私の質問は、未来についてです。この国と国民のため、どのような未来を計画し

築いているのでしょうか?」と、私はプーチン大統領に尋ねた。

「未来は現在のようなものになるのでしょうか。政府の見解を公に批判すれば、法律で処罰されるのでしょうか。国内外での敵の追跡は加速されるのでしょうか。モバイルインターネットの障害はさらに頻発するのでしょうか。新しい特別軍事作戦は

あるのでしょうか」

私が話している間、プーチン氏はメモを取り続けて、そして答えた。

大統領は、ロシアの抑圧的な外国代理人法を擁護した。権力に批判的な何百人ものロシア人が「外国代理人」に指定されている。

「これは我々が発明したものではない」とプーチン氏は私に言った。

「この(外国代理人)法は、1930年代のアメリカを含め、複数の西側諸国で次々と採用されたものだ。そして、アメリカのを含めてそのどれも、はるかに厳しい」

実際には、ロシアの法律は過酷だ。「外国代理人」を教育、公務員、選挙、公共イベントなど公共生活の多くの場から排除する。金融活動や財産を制限する。行政処分を1回受けたその後には、刑事訴追が続くこともある。

しかし、私はこうした点をプーチン大統領に指摘することができなかった。質問を終えると、マイクを取り上げられたからだ。

司会者がいきなり割って入り、話題を変えた。

「別の質問があります。『BBCはどうなるのか』。アメリカ大統領に訴えられ数十億ドルを請求されています」。司会者のパヴェル・ザルビン氏はこう指摘した。

「トランプ大統領が正しいと思う」とプーチン大統領は確認した。

クレムリン(ロシア大統領府)と米ホワイトハウスが意見一致したというわけだ……しかもBBCについて。

プーチン氏は私の質問に戻った。

「新しい特別軍事作戦はあるのか? あなた方が私たちに敬意を持って接するなら、作戦はありません。私たちが常にあなた方の利益を尊重してきたように、あなた方が私たちの利益を尊重するなら。NATOの東方拡大でやったような、汚いまねをしようとしなければ」

何がウラジーミル・プーチン氏を突き動かしているのか。それが、西側への根深い恨みだというのは、誰の目にも明らかだ。

彼は、西側の首脳たちがもう何年もロシアを軽視し、だまし、ロシアにうそをついてきたと主張する。そして、西側首脳は今もうそをついていると。ロシア政府がヨーロッパを攻撃するつもりだなどと主張し、うそをついていると。

「なんてでたらめな話だ」と、クレムリンの指導者は言った。

しかし、欧州の多くの指導者はロシア政府を信用していない。

ロシアによるウクライナへの全面侵攻が始まるまで、ロシア当局は大規模攻撃など計画していないと主張し続けた。

最近では、ロシアが戦闘機やドローンで欧州の空域を侵犯し、サイバー攻撃や破壊工作を展開していると欧州は非難している。

しかし、プーチン氏が私の質問への回答を終えた際のこの発言は、ロシア大統領から欧州へのオリーブの枝、つまり和平の意向を示す合図だったのだろうか?

「ロシアの中長期的な安全が確保されるなら、我々は即座に敵対行為を停止する用意があり、そしてあなた方と協力する準備がある」

プーチン氏はこう言った。

しかし、ロシア政府が自国の長期的な安全保障をウクライナに対する最大限の要求と引き続き結びつけていくなら、欧州首脳たちはロシアを疑い続けるはずだ。

(英語記事 Steve Rosenberg: Was Putin's response to my question about war in Europe an olive branch?

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cz0n5rj812lo


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