2025年12月25日(木)

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2025年12月25日

ゼレンスキー大統領は、アメリカとウクライナが合意した20項目の和平案は、NATO加盟に匹敵する安全保障をウクライナに保証するものだと説明した(22日、キーウ)

ポール・カービー欧州デジタル編集長

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は23日、同国東部からの同国部隊撤退の可能性と、そこに非武装地帯を設けることを盛り込んだ、最新の和平案の詳細を明らかにした。

ゼレンスキー大統領は、先週末にフロリダでアメリカとウクライナの特使が合意した20項目の計画について説明した。今後、アメリカとロシアがこの案について協議し、24日にロシア側が反応を示すとした。

ゼレンスキー氏はこの計画を、「戦争終結のための主要な枠組み」と表現。ロシアが再びウクライナに侵攻した場合にアメリカ、北大西洋条約機構(NATO)、欧州が協調的に軍事対応する、安全の保証を提案していると語った。また、ウクライナ東部ドンバス地方(ルハンスク州とドネツク州)の重要な問題については、「自由経済区」が選択肢となり得ると述べた。

ゼレンスキー氏は記者団に対し、ウクライナは撤退に反対しており、アメリカの交渉担当者が非武装地帯または自由経済区の設置を模索していると述べた。また、ウクライナ軍が撤退したとしても、その地域はウクライナが管理しなければならないと強調した。

「選択肢は二つだ」とゼレンスキー氏は語り、「戦争を続けるか、あるいはすべての潜在的な経済区に関して、何らかの決定を下さなければならない」と述べた。

この20項目の計画は、数週間前にアメリカのスティーヴ・ウィトコフ特使がロシア側と合意した当初の28項目の文書を更新したものとみられている。当初の文書は、ロシアの要求に大きく沿った内容だと、広く受け止められていた。

ロシアは和平合意の見返りとして、東部ドネツク州でウクライナが保持している同州の4分の1の領土からの撤退を、ウクライナに強く求めている。同州の残りは、すでにロシアの占領下にある。

領土問題を含む敏感な課題は「指導者レベル」で解決する必要があるが、新しい草案はウクライナに強力な安全の保証と80万人規模の軍事力を提供するものだと、ゼレンスキー氏は説明した。

更新された計画の多くは、先に独ベルリンで行われたアメリカのウィトコフ氏とジャレッド・クシュナー氏、ウクライナおよび欧州の指導者らによる協議でまとまったものに似ている。協議の舞台はその後、マイアミへ移り、ドナルド・トランプ米大統領のチームがロシアのキリル・ドミトリエフ特使と個別に会談した後、ウクライナと欧州の当局者と協議した。

領土問題に関しては、はるかに詳しい内容が示されたようだが、ウクライナがアメリカと合意に至れなかったことは明らかだ。

ゼレンスキー氏は、ウクライナがドネツク州の4分の1の地域で保持している重装備部隊を5キロ、10キロ、または40キロ後退させ、経済区を設けて事実上非武装化することになるなら、ロシアも「同様に5キロ、10キロ、または40キロ」後退しなければならないと説明した。

ロシア軍は現在、この地域の「要塞(ようさい)地帯」とされるスロビャンスクとクラマトルスク両都市の東約40キロ地点まで前進。その手前のシヴェルスクの町を占領した

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、ドネツク州に関して、提案されている妥協案に感銘を受ける可能性は低い。プーチン氏は今月、ウクライナ軍が撤退しなければ、ロシアはウクライナ東部全域を武力で掌握すると述べている。

一方、トランプ氏は、約4年にわたる全面戦争を終わらせるための合意を推進している。ゼレンスキー氏は、ロシアがアメリカの計画を拒否する余裕はないと考えている。

「ロシアはトランプ大統領に『われわれは平和的解決に反対だ』とは言えない」とゼレンスキー氏は記者団に語った。「もし彼らがすべてを妨害しようとすれば、トランプ大統領はわれわれに大量の武器を供与し、あらゆる制裁を科さざるを得なくなるだろう」。

EU加盟や投資基金についても

ゼレンスキー氏は、ドネツク州に自由経済区が設けられる場合、それはウクライナの行政と警察の管理下に置かれなければならず、「いわゆるロシアの警察では絶対にない」と明言した。現在の前線は経済区の境界となり、国際部隊が配置され、ロシアの浸透を防ぐことになるとした。

ロシアはこれまで、欧州側が提案した、いわゆる「有志連合」による和平合意順守の監視を、「厚かましい脅威」だと拒否している。

ゼレンスキー氏は、和平計画全体について国民投票を実施する必要があり、ドンバス地方における自由経済区の構想も国民投票でのみ決定できると述べた。

また、現在ロシアが占拠しているザポリッジャ原子力発電所周辺にも経済区を設ける必要があると指摘。さらに、ロシア軍はドニプロペトロウシク、ミコライウ、スーミ、ハルキウの4州から撤退しなければならないと強調した。

原発に関するアメリカの現行案は、ウクライナとアメリカ、ロシアが共同で運営するというものだが、ゼレンスキー氏は、ウクライナ政府はこれに同意していないと述べた。

和平計画は主要ポイントとして、ウクライナの主権を再確認し、ロシアとその隣国との間での監視メカニズムを伴う不可侵条約を提案している。

また、攻撃を受けた加盟国への支援を義務付けるNATOの第5条に類似した強力な安全の保証を提供し、ウクライナに平時で最大80万人の軍事力の保持を認めるとしている。

安全の保証の見返りとしてアメリカが補償を受ける計画については協議が続いており、現時点では文書に含まれていないと、ゼレンスキー氏は説明した。

一方、ウクライナのNATO加盟を禁じる記載はない。これは、当初の28項目の計画に含まれていたものであり、ロシアが一貫して要求してきた内容だ。

さらに最新の枠組みでは、期日を定めたうえで、ウクライナの欧州連合(EU)加盟を提案している。現在、ウクライナは候補国だが、アルバニアなど他の候補国が優先されるとみられている。

アメリカとヨーロッパが関与する約2000億ドル(約31兆円)規模のウクライナ向け投資基金の計画もある。

その他の項目では、合意署名後できるだけ早くウクライナが選挙を実施することが求められている。ロシアとアメリカは共に選挙を強く求めている。ただ、ウクライナは全面侵攻を受けて戒厳令下にある。

(英語記事 Zelensky moves towards demilitarised zones in latest peace plan for Ukraine

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cy07z6e4x2no


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