クレア・メルフォード氏(左)とイムラン・アフメド氏。ともにオンラインのヘイトスピーチや偽情報に反対する運動を展開してきた
米政府は24日までに、イギリスの運動家2人を含む欧州本拠の5人について、言論の自由の抑圧を米プラットフォーム企業に「強要」しようとしたとして、査証(ビザ)の発給を禁止した。欧州側は反発している。
ビザ発給が禁止された英国人は、労働党の元顧問で、現在は「デジタル・ヘイト(憎悪)対策センター(CCDH)」を率いるイムラン・アフメド氏と、「グローバル・ディスインフォメーション・インデックス(GDI)」の最高経営責任者(CEO)のクレア・メルフォード氏。
ともに、アメリカのドナルド・トランプ政権から「過激派活動家」とされ、入国を禁止された。
このほか、フランスの元欧州委員ティエリー・ブルトン氏と、ドイツに拠点がある反オンラインヘイトのグループの幹部2人もビザ発給を禁止された。
この措置を、欧州首脳らは強く批判している。
英政府は、同国が言論の自由の擁護に「完全にコミットしている」と表明。「どの国にも独自のビザ規則を設定する権利があるが、私たちはインターネットから最も有害なコンテンツをなくすために機能している法律や制度を支持する」とした。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、「ヨーロッパのデジタル主権の弱体化を目的とした脅迫と強要」だと批判。欧州連合(EU)の外相にあたるカヤ・カラス外務・安全保障政策上級代表も、「容認できないことであり、私たちの主権に挑戦する試みだ」とした。
一方、アメリカは今回の措置について、米テクノロジー企業に対する規制を訴えてきた個人や組織への対応だと説明。マルコ・ルビオ国務長官は、対象者らを「世界的な検閲産業複合体」に属しているとした。
ルビオ氏はまた、「トランプ大統領はアメリカ第一主義で、アメリカの主権侵害は許されないと明確にしている。アメリカの言論を標的にした外国の検閲という越権行為も例外ではない」とした。
「魔女狩り」だと反発
米政府は、CCDHが過去にジョー・バイデン政権と協力していたとし、アフメド氏を「協力者」と呼んでいる。BBCニュースはCCDHにコメントを求めている。
偽情報の拡散を監視する非営利団体GDIについては、アメリカの税金を使って「アメリカの言論や報道を検閲しブラックリストに入れることを勧めている」と、サラ・B・ロジャーズ国務次官が批判している。GDIは2018年にメルフォード氏が創設した。
GDIの広報担当はBBCに、「今日発表されたビザ制裁は、言論の自由に対する権威主義的な攻撃であり、政府による検閲というひどい行為だ」と述べた。
ブルトン氏は、欧州委員会でテクノロジー関連の規制を主導した人物。米国務省は、ソーシャルメディア企業にコンテンツモデレーションを課す、EUの「デジタルサービス法(DSA)」の「首謀者」だとしている。同法については、米保守派が、右派の意見を検閲しようとするものだと怒っている。EUはこれを否定している。
ブルトン氏は、テクノロジー企業はEUの規則に従う義務があると主張し、世界一の富豪でXのオーナーのイーロン・マスク氏と衝突している。今回のアメリカの措置についてブルトン氏は、「魔女狩り」が行われているとしている。
ドイツの団体「ヘイトエイド」のアンナ=レナ・フォン・ホーデンベルク氏とジョセフィーヌ・バロン氏も今回、ビザ発給禁止の対象となった。米国務省はこの団体について、DSAの施行を支援したとしている。
両氏は米政府の措置について、「法の支配をますます無視し、どんな手段を使ってでも批判者を黙らせようとする政府による弾圧行為」だとBBCに説明した。
(英語記事 UK social media campaigners among five denied US visas)
