2026年2月21日(土)

酷似する 「戦間期」と現代

2026年2月21日

「おかげさまでメールや手紙でたくさんの反響をいただきました。全く関係ない取材をしていた人から、『実は、私も……』と言われたこともあります。多くの人の人生に関わりがある歴史だったのだと改めて感じました。家に満州から届いた軍事郵便のある人が、連載を機に中高生のお子様と開拓団の慰霊碑を見に行く場面を取材させていただく機会もありました。地域の公民館で引揚者の講演会が企画され、歴史を未来に残す動きも広がるなど、向き合わなければならない歴史なのだと、意を強くしました。また、こうした〝ささやか〟ながらも、動きがあったことはうれしかったですね」

時間が歴史を「成熟」させる

 戦前は、報道機関も戦争プロパガンダの一翼を担った。それは『信濃毎日新聞』も例外ではなかった。連載では、自社の報道もつぶさに調べ、目を背けがちな当時の報道内容にも正面から向き合っている。

「弊紙でも開拓団の歌を募集するなど、満蒙開拓推進の一翼を担った過去があります。歴史を語るうえで、当時にどんな報道をしていたかを振り返ることは欠かせないと思い、自分たちを省みることは絶対やろうと思っていました」

 時代の流れや同調圧力に抗うことには勇気がいることかもしれない。

「わずかでもいいんです。日々のニュースから、『確か、満蒙開拓ではこうだったよな』と類似点を見出し、立ち止まって考えることが大切です。戦後80年が経ち、様々なことを冷静に検証できるようになりました。歴史には〝成熟〟させる時間が必要なのかもしれません」

鍬を握る 満蒙開拓からの問い
信濃毎日新聞社(編著)
1980円(税込)

 

 

 

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Wedge 2026年3月号より
酷似する「戦間期」と現代 第三次世界大戦を防げ
酷似する「戦間期」と現代 第三次世界大戦を防げ

「新しい戦前になるんじゃないですかね」─。今から4年前、テレビ朝日の『徹子の部屋』でタモリさんが口にした言葉だ。 どのような意図で発言したのかはわからない。ただ、コロナ禍だった当時、全体主義体制を称揚するような空気が漂い、議会制民主主義の危機も顕在化し、「1930年代」に時代が近づきつつあると感じていた私は、その言葉に妙な〝重み〟を覚えずにはいられなかった。 昨今の様々な出来事を見るにつけ、その感覚は確信へと変わった。時代は、当時の「戦間期」を思わせる局面に入り、大国指導者が世界の行方、人類の運命を左右する時代になったのである。このままでは、最悪の場合、第三次世界大戦が起こる可能性も否定できない。 ただ、もし戦争になったとしても、大国指導者たちが戦場に行くことはない。いつも犠牲になるのは、市井の人々である。 英国を代表する歴史家、A・J・Pテイラーは、『ウォー・ロード 戦争の指導者たち』(新評論)最終章で日本のことを取り上げ、こう指摘している。「日本は戦争の指導者はただの一人もいなかった」 つまり、指導者不在のまま、日中戦争、太平洋戦争へと突き進み、日本は破滅したのである。当時、大衆も熱狂し、政治はそれに流された面もある。 一度始まった戦争を終わらせることは容易ではない。それは4年が経過したロシア・ウクライナ戦争を見れば明らかである。動乱の時代、今こそ歴史に学び、教訓、希望を見出し、この危機から「脱出」する必要がある。


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