「おかげさまでメールや手紙でたくさんの反響をいただきました。全く関係ない取材をしていた人から、『実は、私も……』と言われたこともあります。多くの人の人生に関わりがある歴史だったのだと改めて感じました。家に満州から届いた軍事郵便のある人が、連載を機に中高生のお子様と開拓団の慰霊碑を見に行く場面を取材させていただく機会もありました。地域の公民館で引揚者の講演会が企画され、歴史を未来に残す動きも広がるなど、向き合わなければならない歴史なのだと、意を強くしました。また、こうした〝ささやか〟ながらも、動きがあったことはうれしかったですね」
時間が歴史を「成熟」させる
戦前は、報道機関も戦争プロパガンダの一翼を担った。それは『信濃毎日新聞』も例外ではなかった。連載では、自社の報道もつぶさに調べ、目を背けがちな当時の報道内容にも正面から向き合っている。
「弊紙でも開拓団の歌を募集するなど、満蒙開拓推進の一翼を担った過去があります。歴史を語るうえで、当時にどんな報道をしていたかを振り返ることは欠かせないと思い、自分たちを省みることは絶対やろうと思っていました」
時代の流れや同調圧力に抗うことには勇気がいることかもしれない。
「わずかでもいいんです。日々のニュースから、『確か、満蒙開拓ではこうだったよな』と類似点を見出し、立ち止まって考えることが大切です。戦後80年が経ち、様々なことを冷静に検証できるようになりました。歴史には〝成熟〟させる時間が必要なのかもしれません」
