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【解説】
徐才厚(中)と郭伯雄(右)2013年9月
この記事に驚くべき内容は特にないが、徐才厚の摘発が単に汚職だけによるものではないことを示唆する興味深い過程を描いている。徐の立身出世が同郷、瓦房店市出身の于永波との繋がりから始まり、そして天安門事件後に台頭した楊兄弟を打倒して江沢民が軍統制権を掌握する中で昇進したことが描かれている。徐才厚と薄熙来の関係が長興島開発を巡る利権供与で強められた点も興味深い。
習近平がイニシアチブをとる汚職高官の摘発が党や政府、軍内部の汚職一掃が目的であることは疑いの余地はないが、同時に習が軍内部の指揮統制権を掌握しようというプロセスで阻害要因となる者を排除しようとしている点も重要なのだ。汚職の摘発は、激しい権力闘争の一つの現れであることも忘れてはならないだろう。習近平は「戦える軍隊」になれと檄を飛ばすが、現在で解放軍では汚職摘発と人事異動、そして機構改革と指揮官たちの気持ちが戦闘準備に向いているとは思えず、戦争どころではない。
軍の汚職摘発を巡る過程で「最大の黒幕」まで及ぶ可能性は考えにくいが、もう一人の軍内の「老虎」郭伯雄元軍委副主席について糾弾する内部告発の手紙なるものがネットに出回り、彼の息子(郭正鋼・浙江省軍区政治部主任)も事情聴取されているという報道もあり、郭の去就が注目されるようになっている。習近平による軍内「虎退治」の行方にいよいよ目が離せない。
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