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2014年7月29日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

徐才厚摘発の原因は汚職ではなく薄熙来事件

 徐才厚は最大の汚職官僚であり、官職売買で100億元以上を懐に入れたが、今回このために摘発されたわけではなく、薄熙来事件に関わったことが一番の原因だ。習近平が政権を掌握後に更迭したのは、習の政権掌握を妨害した者と政権掌握後に執政を妨害した者がメインだ。徐才厚と周永康は治安維持を通じ、密接に協力し合い、仕事からプライベートの関係と利益の結びつきを強めた。

 薄熙来は大連市(瓦房店市を管轄)で在職中に徐才厚と関係を築いた。薄が大連市市長、党委員会書記だった時代に徐才厚に多くの利権を与え、深い関係を築いた。徐は軍内で昇進を続け、遼寧省の省長、商務部部長になった薄との交流を続け、徐に瓦房店市の開発や長興島工業区の開発を通じて利権を手にした。2006年に大連市は長興島(市・県より行政区分で1級下級の鎮)開発に着手したが、この工業地区への建設投資総額は243億元に上った。徐才厚は一族の長興島の開発責任者に推し、グループを形成しプロジェクトを一手に握った。

 徐才厚の周永康と薄熙来との関係についてはまだ捜査中だが、とりあえず徐才厚は薄、周による政変陰謀には深くは加担していないことが分かった。しかし、習近平にとって軍権掌握は急務だ。徐の影響力は軍内の重要部門に及ぶため、習は汚職摘発を通じて権威を確立し、言う事を聞かない頭目を牽制しようとしている。

 習近平は中央軍委の主席に就任してから谷俊山案を非常に重視しており、12回も指示や訓令、通知を出して徹底的に調べるよう指示したという。しかし、谷俊山や徐才厚に関わったといわれる中央軍委委員は現職、退職合わせ15人ともいわれ、習は彼らを徹底して調べるよう指示したという。この機に乗じて江沢民勢力を一掃して指揮統制を掌握しようというわけだ。

 現在の中央軍委副主席である範長竜も徐才厚と関係が深く、二人は第16集団軍で仕事をした経験があり、徐が集団軍政治部主任だった際に范は傘下48師団の参謀長で、その後、徐才厚が済南軍区政治委員に、範長竜は済南軍区司令員に昇進した。範の出世には徐の推薦があったといわれる。徐の処分は範を震え上がらせ、習のいう事を聴くようになったものの、それでも依然、重要部門を把握していることから、習近平は2013年3月に腹心の鐘紹軍を軍委に派遣して習近平事務局主任のまま、中央軍委弁公庁副主任(軍位は大佐)を兼任させたのである。

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