2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年8月19日

 6月30日付の豪戦略政策研究所(ASPI)のブログ・サイトStrategistで、Graeme Dobell同研究所ジャーナリスト・フェローが、クリントン元米国務長官の回顧録を引用しながら、ヒラリー・クリントン元長官が打ち出したアジア・ピヴォットは対中戦略である、と論じています。

 すなわち、ヒラリーは、米国がアジアでしていることは「ピヴォット」(アジアに軸足を置くこと)だという。

 クリントンの回顧録の第2部は、「太平洋を越えて」で始まり、その第1章は、アジア、すなわちピヴォットに関して書かれている。そして、このピヴォットは、第1章を通して語られたテーマである。たとえ、ピヴォットのメカニズムが複雑であっても、その目的は単純である。それは専ら中国である。

 ピヴォットの創設者として、クリントンは、分かりやすい言葉で、大戦略移行の目的及びその能力に関して語っている。国務長官として最初の外遊として、クリントンは、日本、インドネシア、韓国、そして最後に中国を訪問した。それに関して、彼女は、「我々は、アジアと世界に向かって、米国が戻って来たというメッセージを送る必要があった。」と言う。

 ヒラリーは、ピヴォットは、米NSCが、「西から東への相対的富及び経済力の歴史的移行」と呼ぶものに対応したものだと見ている。

 クリントンは、米中間の摩擦は、個別問題を超えたものだと指摘する。すなわち、米中間の衝突は、「世界、少なくともアジアがどうあるべきかに関する全く異なった見解」によるものだと言う。

 彼女の最終的考えは次のようである。

 「我々は、中国を封じ込めすることには何の関心もない。しかし、我々は、中国が、全ての国家を拘束するルールに従って行動するよう、強調する。」

 クリントンは、経済的ピヴォットであるTPP交渉については、「アジアにおける米国の地位を強化する戦略構想」であると言う。

 クリントンは、何故TPPに日本が入って中国が入らないかに関して、ある一文で語っている。「TPPは米国のアジア戦略の重要な経済的支柱になった。それは、ルールに基づく秩序と米国の協力の拡大による利益を示す。」と。

 もし米国政府が、ワシントンの弁護士やロビイストを説得して、日本、ベトナム、豪州等とTPPの妥協が出来るのであれば、それは、ルール作り、そして大戦略となろう。


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