ハマス側も「ポーズ」か――支持者らからは再武装匂わせも
撤退どころか支配地域拡大のイスラエルの思惑
ハマス側も、こうした状況下でイスラエル側が譲歩に応じないことを承知の上で、あえて武装解除に同意するポーズを示しているとの指摘もある。事実、ハマスはトランプ氏が発表の際に使用した「武装解除」という言葉は拒否し続けており、あくまで兵器を「保管」するという表現に固執している。そもそも、長引く戦禍において組織としての弱体化や、資金繰りの悪化、カタールやトルコなど仲介国からの圧力、そしてガザ内部におけるハマス批判の高まりから、ハマスに残された選択肢は極めて限られていたのも現状だ。この段階で何らかの思い切った方針を打ち出さない限り、長引く避難生活に疲弊しきっている市民からの理解も得られなかったのも実情だろう。
一方で、イスラエル側はハマス戦闘員らへの攻撃であり、民間人は標的としていないと主張するものの、拡大し続ける被害には国際社会からも非難の声が上がっている。イスラエル軍による攻撃は現在、小康状態となっているものの、
「遅すぎた巡礼」――ガザ住民がハマス指導部に突きつける憤り
このような政治的駆け引きにより簡単に合意には至らないことを、当初から最も良く理解していたのが、現地ガザで暮らす市民たちだ。ガザ市民らはトランプ氏による突然のSNS上での「歴史的」発表を、極めて冷ややかな視線で受け止めていた。戦争中に、ガザを脱出することが出来た、ジャバリア難民キャンプ出身の男性は、筆者がトランプ氏の発表についてどう思うかを聞いたところ、「何も信用出来ないよ」と苦笑いで返してきた。
ハマス指導部やイスラエル側が、双方の主張を曲げず一切の合意に至ることがない状況を長年目の当たりにしてきた経験からだ。トップ同士の駆け引きにガザ市民らはもはや懐疑的で、期待を寄せる者は多くないという。「一体何度、こうした言葉に踊らされてきたか」という諦めと呆れが混じった言葉が、トランプ氏の宣言以降、オンライン上に相次いだことからも、現地ガザの空気感が決して高揚したものではないことが窺える。
3人の子どもを抱え、テントでの避難生活を余儀なくされている男性は、ハマス交渉団のガジ・ハマド氏の「我がガザのパレスチナの民を救うために“譲歩”することを決断した」という発言に強い違和感を感じたという。彼は「もし本当に民衆を気にかけていたのなら、あらゆる状況が既に明らかだった2年前、壊滅的な被害が出る前にこの譲歩を行うべきだった」と訴え、今回のハマスの判断を「自分たちの私的な利益や、組織としての生存の見込みが絶たれたからこその、遅すぎた日和見主義に過ぎない」と嘆いた。
