2026年9月17日(木)

教養としての中東情勢

2026年9月17日

 サウジを牛耳るムハンマド皇太子はこの危機にトランプ氏へフーシ派攻撃を2度にわたって要請した。だが、深刻な弾薬不足に直面しているトランプ氏は「新たな戦線」を開くことに難色を示し、要請を拒否した。

 皇太子にとっては大ショック。皇太子がトランプ氏やその一族と親密な関係を構築し、トランプオーガニゼイションなどに何十億ドルも投資してきたのは今回のような「有事」に備えてのことだった。

 それが拒絶されたことで「やはり米国は信頼できない」(中東専門家)と感じたのは疑いない。フーシ派は7月、サウジの船舶を対象とした海上封鎖を宣言、サウジタンカーを攻撃した。今回の攻勢はイラン革命防衛隊の精鋭部隊である「コッズ隊」が背後で協力したといわれている。

選択迫られる湾岸諸国

 米国に対して「失望と苛立ち」を感じているのはサウジだけではない。トランプ政権に軍事的に大きく依存してきたアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、クウエート、カタール、オマーンも同様だ。

 これら諸国とペルシャ湾の奥に位置するイラクは14日、イランとオマーンからホルムズ海峡の航行に関して説明を聞く予定だった。だが、会議は突然延期された。

 6月にまとまったイランと米国の覚書によると、イランはオマーンと海峡の航行方式をまとめ、ペルシャ湾岸諸国と協議することになっていた。両国はイランの海峡支配が色濃い案に合意しており、航行方式の説明を受けることはイランによる海峡支配の権限を承認することにつながりかねない。

 サウジが攻撃にさらされるという新たな事態の中で、イランへの「服従」とも受け取られかねない航行方式を聞くのは時期尚早という判断があったのは間違いない。湾岸諸国はこれ以上のイランからの攻撃を避けるため米国の反対を押し切って航行方式を承認するか、それとも終わりなき戦争に巻き込まれていくのか、厳しい選択を迫られた格好だ。

タエブ司令官の野望

 戦争を泥沼化させ、石油大国のサウジをも標的にし、2つの海峡を封鎖して米国に圧力をかけて最終的に勝利する。こうした戦略を描き、イラン指導部を引っ張っているのは誰なのか。

 開戦以来の謎だったが、その手がかりをニューヨーク・タイムズ(13日付)が報じている。その人物とは超保守派で、民兵組織バシジ(人民動員軍)司令官のホセイン・タエブ師だ。

イラン攻撃の「黒幕」と目されるホセイン・タエブ師(ZUMA Press/アフロ)

 7月初め、米国との和平交渉が覚書としてまとまり、穏健派のペゼシュキアン大統領が最高指導者故ハメネイ師の葬儀のためイラクに滞在していた時のことだ。大統領は突然、衝撃的な報道に仰天する。イランの革命防衛隊がホルムズ海峡でカタールのタンカーを攻撃、炎上させたという内容だった。


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