エスカレートする宇宙への「軍拡」
米軍が、上記のように宇宙兵器開発を急いだもう一つの背景にあるのが、今世紀に入り、先進各国が依存度を高める「宇宙資産」の急増だ。
特に米国の場合、宇宙にすでに打ち上げ、運用中の衛星の数は、2026年段階の推定で、1万~1万2000個とされる。その大半は、スペースXのスターリンク関連の商業、民生用で占められている。
軍事衛星の正確な数については、国防総省は明らかにしていないが、「247個前後」と推定される。しかし、スターリンクの衛星の中には、いつでも軍事転用可能なものが多く存在しているため、将来、本格的な宇宙戦争となった場合、米軍は無数の衛星を駆使できることになっている。
また、米連邦通信委員会(FCC)は今年1月、スターリンク衛星をさらに7500個打ち上げる計画を承認済みだ。
このほか、すでに多くの国で普及しているGPS(全地球位置確定システム)は、民間のマイカー、船舶の移動などにとって死活的に重要な役割を担っていることから、有事の際にGPSが破壊された場合、経済的にも大混乱を引き起こしかねず、米軍にとって、こうしたインフラを支える静止衛星の保護なども任務として求められることになる。
当然のことながら、増大する「宇宙資産」を防衛するための米軍の態勢も、ここ数年来、人員、予算などの面で急速に強化されつつある。
まず、人員面だが、これまでに明らかになったデータによると、宇宙戦争の“現場”で直接戦闘に従事する「ガーディアン(guardian)」と呼ばれる“宇宙戦士”(従来型戦争の兵士soldierと対比される)の数は26年現在、すでに9400人に達しており、彼らを技術面で支える専従スタッフも5000人規模となっている。
ガーディアンたちはもちろん、宇宙に“駐屯”しているわけではなく、地上の「宇宙軍(Space Force)」、作戦を指揮する「宇宙司令部(Space Command)」などの施設で常時任務についているという。
宇宙戦争に備えた軍事予算も拡大する一方だ。
25会計年度の場合、国防予算の中から実際に運用された宇宙関連予算は、287億ドルだった。それが、26年度には340億ドルに増加、そして、今年10月からスタートする27会計年度分として政府は、宇宙戦争関連の研究開発、兵器調達など合わせ一挙に711億ドルと2倍近くの予算を議会に要請している。
もし、要請通り議会が承認すれば、米軍の宇宙戦争関連予算は、日本の防衛費のほぼ1年分という大規模なものとなる。
国内総生産(GDP)の拡大にともなって「宇宙資産」が増大しつつある中国にとっても、宇宙はますます重要な“戦場”と化しつつあるだけに、今後、宇宙戦争に向けた米中間の軍拡もますますエスカレートしていくことになりそうだ。
