1年後、物語は戻ってきた。いや、以前より激しく強調された。9月24日の歓迎式典でトランプ大統領が「第二次世界大戦で我々は同盟国となった」と述べると、習近平は「肩を並べてファシズムの侵略と戦った」と応じた。
王毅外相の成果説明によれば、習近平は訪米中、「中国の軍民は数十万の命を代償に、数百人の米軍飛行士を救った」と何度も語った。米国の血に言及するどころか、中国も米国のために血を流したと、相互の犠牲の物語として語り直したわけだ。
かくして訪米後の米中両国の成果文書には「二次世界大戦の同盟国」なる文言が書き込まれたのであった。中国の狙いはたんに古い友好を確認するだけではない。米中がともに血を流して作り上げた戦後国際秩序を、米中で守っていくというストーリーが続く。
王毅外相は成果説明で「中米はともに国連安保理常任理事国である。戦後国際秩序を守り、軍国主義の復活を防ぐことは双方の共同責任だ」と述べている。
ファシズムと戦った戦勝国として戦後秩序をともに作り、守っていく。この物語こそ、中国が米国と「対等」を名乗る根拠である。米国にも語らせた「二次世界大戦の同盟国」の物語を最大限活用している。
同じ物語、異なる含意
だが、米国も狡猾だ。中国に花を持たせつつも、「罠」をしかけている。
米国のファクトシートは、第二次世界大戦の同盟の一文のすぐ後に「第二次世界大戦以来、米国の前方展開は自由で開かれたインド太平洋を守り、何世代にもわたる米国の繁栄に貢献してきた」と続けている。中国との過去の同盟に言及した後に、米軍の前方展開、すなわち日米同盟や米韓同盟が自由で開かれたインド太平洋を守ってきたと言っているわけだ。
さらに、中国がこだわった「尊重、公平、対等に基づく建設的戦略安定関係」という言葉にも含みを持たせている。米国側の英文は "on the basis of respect, fairness, and reciprocity" だ。reciprocityは、通商の文脈では「互恵」と訳すのが適当だろう。トランプ政権が「相互関税(reciprocal tariffs)」で掲げてきた旗印であり、これまで不公平だった貿易を正し、互いに――とりわけ米国が――利益を得るという意味で使われてきた。大国としての地位を認めた言葉とは言いがたい。
もっとも、中国語では reciprocity を「対等原則」と訳すのが一般的で、米国政府の中国語文書も「対等」の語を当てている。訳語そのものは米中で一致しているのだ。違いはその先にある。
王毅外相は成果説明で「対等とは、両国の主権が平等で上下の別がないことだ」と定義し、覇権やいじめをしないことまで読み込んだ。同じ言葉を、米国は通商の互恵として、中国は大国としての地位の対等として読んでいるわけだ。

