その上で、ロシアが具体的になすべき措置として、特に以下を列挙している。
① 国家間の高いレベルの信頼と透明性、そして安定した法的枠組みの構築。
② 中国だけではなく、特に欧州連合(EU)との間に長期かつ安定したパートナーシップを築くこと。
③ 民間セクターへの統制強化ではない、国家と民間企業との相互作用の新たな形態を模索すること。
④ 「力こそ正義」の発想は長期的に危険であり、国際法や国際機関を支援すべきこと。
しかし、今日の国際情勢に関するロシアの「公式見解」は、コルトゥノフ氏の論文の主張とは全く異なるものであり、多極化の一層の進展と、その主たるプレイヤーの一つであるロシアの高い地位を宣揚し、西側世界の「衰退と分断」を強調するというものだ。ロシアの影響力の発揮が「分断され予測不可能な世界情勢を巧みに利用」した結果に過ぎないとか、あるいは将来、「世界の無秩序状態が収束して、国際システムが再び統合される」などと言うのは、「公式見解」とは異なる。
避けているウクライナ侵攻の問題
ロシアが国際社会の分断と予測困難さを巧みに利用することで、その影響力を維持しているとの見方は正鵠を得ている。これに対し、「国際システムが再び統合される」可能性が高いとの見方には議論があるだろう。
西側の研究者の間では、むしろ今の状態は相当長期にわたると見る向きが多いのではないか。いずれにせよ、ロシアの研究者で政権側との関係も維持しているコルトゥノフ氏が、そのような見通しをもち、しかも、それをロシアにとってのリスクと捉えていることは非常に興味深い。
ただ、このような情勢認識に同意できるか否かにかかわらず、結論として同氏が指摘する「ロシアがとるべき措置」は、まったく正しいもので、この点は強調しておきたい。
コルトゥノフ氏がこの論文で巧妙に避けている論点がある。それはロシアによるウクライナ侵攻の問題だ。同氏が指摘する措置がいま特に必要とされる最大の理由は、プーチンによる主要な内外政策の多くが「ウクライナ侵攻の成功」(=ウクライナの支配)という目的達成の犠牲になっているからに他ならない。
