ヤマト依存のラストワンマイル
10兆円規模のネット通販市場をけん引するのが、アマゾンや楽天などのネット通販大手だ。アマゾンは直販型、楽天が運営する楽天市場はテナント型とビジネスモデルは異なるが、商品を消費者に届けるラストワンマイル(事業者と利用者を結ぶ最後の区間の意味でもとは通信用語)は、アマゾンも楽天も、ヤマトを中心とした宅配業者に委ねているのが現状だ。
本場米国では、無人ヘリによる宅配構想が注目されるアマゾンも、日本では昨年佐川が引き揚げ、「ヤマト頼み」の状態だ。7月から開始した小売店のプライベートブランド商品の販売で取材に応じたアマゾンジャパンの渡辺朱美・バイスプレジデントは「配送部分は、宅配業者との長期的なパートナーシップを築いていく」と強調する。
一方の楽天は、半年前までは戦略が違った。アマゾン型の物流システムを築こうと06年にトヨタ自動車から武田和徳氏を招き常務執行役員に据えた。武田氏は10年に物流子会社として設立した楽天物流の会長に就任し、アマゾンが先行してきた即日配達や、楽天市場出店者の在庫管理といった物流戦略の「カイゼン」を図った。
しかし、楽天物流は、13年12月期の決算で、売上高64億円に対し営業損益は39億円の赤字、54億円の債務超過となった。楽天は今年4月に突如、楽天物流を吸収合併すると発表。武田氏は、トラベル事業に担務替えとなった。
楽天はラストワンマイルも狙っていたと言われ、参入しやすいネットスーパーの楽天マートで中小宅配業者と連携し、首都圏を中心に自社配送網を築き始めている。いずれは、その配送網に楽天市場の商品を混載する計画だったと言うが、関係者は「混載は実現できていない」と打ち明ける。結果、楽天もヤマト依存に傾斜している。
オフィス用品通販大手のアスクルは12年に、資本提携しているヤフーの協力を得て、ネット通販「LOHACO(ロハコ)」を開始。事業者向け(BtoB)から消費者向け(BtoC)に進出した。BtoBでは、子会社の運送会社ビゼックスを主に使っていたが、ロハコの配送ではヤマトに委託した。「消費者からの信頼がある」(広報)からだ。
芽生え始めた新たな動き
ヤマトに死角はないのだろうか。
07年に設立された新興系のエコ配(東京都港区)。自転車配送を主軸にし、荷物の大きさと集荷エリアを限定することでコストを圧縮し、安い配送料を実現している。年間の取扱個数は約1000万個で、そのうち個人向けは15%程度というが、片地格人社長は「BtoCは伸ばしていく」と意気込む。