2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2014年9月2日

 配送業は中小事業者が多く、競争軸が価格だけになりやすいため、配送料には常に下方圧力が働く。ヤマトですら、売上高は増えているのに営業利益は伸び悩んでいる。主因はネット通販の配送単価の下落だ。ヤマトは料金決定方式を個数からサイズに変更することで状況を打破しようとしている。

 ライバルの佐川は「2年ほど前から、適正な運賃をいただくという交渉を続けてきた」(森下琴康執行役員)結果、大幅な増益を達成しており、寡占化がさらに進めば通販と物流の地位逆転もあり得るのかもしれない。

 しかし、もっと中長期的にみると、違った状況が想定される。物流業界に詳しい伊藤忠テクノソリューションズの長谷川真一氏はこう指摘する。

 「小売業のEC化率は現状3%程度だが、先進国ではいずれ10%~20%になるのは確実と言われており、そうなると現状の大手3社体制では捌ききれない。ネット通販だけを受託する第4極が勃興する可能性は十分にある」

 というのも、「ヤマトでは5割の伝票は手書き。ネット通販の荷物だけに絞れば全てITで管理できるため効率化の余地が大きい」(長谷川氏)からだ。

 「歴史的に見て、宅配は集荷が売上の源泉だったため、集荷拠点の整備が重要だった。通販は物流センターがあればよい。通販が主になれば競争軸が変わる可能性が高い」(業界誌編集者)

 アスクルは、順調に拡大しているロハコの今後の課題のひとつに「配送サービスの進化」を挙げ、ラストワンマイルの自社化を視野に入れている。

 「BtoBでは、配達したコンテナの持ち帰りや消耗品の回収など、いわゆる“静脈配送”で付加価値を高めた。BtoCでも配送を使った様々な提案ができると考えている」(川村勝宏・上級執行役員ECR本部長)

 ヤフーは東京・豊洲地区で始めた買い物代行の実験サービス「すぐつく」に手ごたえを感じている。「平均37分という驚異的な早さに『実験をやめないで』という声は多い。配送コストはかかるが、広告による回収というビジネスモデルが構築できないか模索しているところ」(小澤隆生執行役員)。

 PART1で見たように、これまでの配送の常識では対応しにくい生鮮食料品がEC化するとプレイヤーが変わる。配送はコストなのか利益の源泉なのか。新興勢力による模索は続く。

*日米中「物流」最前線(1)
先発隊の失敗に学ぶ ベゾスアマゾンフレッシュの挑戦 ネットスーパーの未来は

 ◆Wedge2014年9月号より









 

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