2024年11月22日(金)

韓国の「読み方」

2014年8月29日

 2012年の第18代大統領選挙では、与野党そろって、「責任総理制」の実現を主張していた。朴槿恵大統領もこれを政治刷新案の核心と位置づけ公約に掲げていたが、他の公約と同様全く手がつけられていない状態である。

 大統領に権限が集中していることが必ずしも悪いことばかりではないが、結果として人事聴聞会の機会が、大統領に対する野党の総力批判の場として帰結せざるを得ない。国内では「責任総理制」を実現することを真剣に検討する時期にさしかかっているとしばしば提起されるが、現行の大統領制の下では実現不可能との見方が一般的である。

一連の人事問題により朴政権の支持率低下

鄭烘原首相(左)と朴槿恵大統領(右)
写真:Yonhap/アフロ

 朴大統領は、2013年2月の政権発足当初も人事が決まらず苦戦を強いられたが、2014年中盤の第2期内閣改造においても同じく苦戦を強いられている。セウォル号事件は、特に政治的責任を問う首相・長官の人事過程で大統領のリーダーシップに対する問題点を露呈したようである。

 チョン首相の留任に対しては与党含め批判的な声が多くあがった。大統領自らが提起した国政アジェンダを放棄してしまう結果となったためである。すなわち、セウォル号事件を受け朴大統領は、「韓国社会の弊害を解消しなければ国家に未来は無い」として国家改造をかかげ、その第一歩として国務総理の刷新にメスをいれたわけだが、2人の候補が「落馬」したという理由で前総理を留任するという選択は、改革を放棄したか、このような困難を打ち破るほどのリーダーシップが無いという印象を国民に与えることとなった。

 チョン総理は着実に仕事をこなすタイプではあるが、与野が激突する状況に体をはってリーダーシップを発揮するタイプではない。推進力とビジョンには欠けるが誠実さが認められていた人物で、それを大統領もわかっていたため彼の辞任を受入れたのではなかったか。


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