2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年5月7日

 米AEI研究所のオースリン日本研究部長が、3月27日付ウォールストリート・ジャーナル紙で、中国が先の大戦の古い記憶に基づく反日感情を日本の孤立化に用いようとし、韓国もそれに乗っており、北東アジアの安定は悲観的である、と指摘しています。 

 すなわち、オランダでの核安保サミットでの日米韓首脳会談がこれほど重要なものであったということは、最近の日韓関係の機能不全ぶりを表している。そして、このような状態から利益を得ているのは、勿論、中国である。

 中国は、東シナ海、南シナ海の係争領域に侵入するだけでは飽き足らず、日本帝国の亡霊をよみがえらせ、中国の野心を覆し得る唯一の近隣国である今日の民主主義日本の正当性に疑問符をつけ、日本を孤立させることに力を集中させている。このアプローチは、同様に20世紀の日本帝国の犠牲者である、韓国においても支持されている。

 1月には、中国は、1909年にハルビンで伊藤博文を暗殺した安重根に、記念をささげた。これは、安重根を国家的英雄と考えている韓国人を喜ばせた。暗殺事件を祝うことで、中国は、日韓間の溝を拡大させている。

 そして、中国政府は、新たな反日的祝日を二つ設定し、次世代の反日感情を助長させようとしている。日本の連合軍への降伏を記念する日と、1937年の南京大虐殺を記念する日である。これらの祝日を、傷が生々しく、戦争からの回復途上にある数十年前に設定したのであれば理解できるが、75年以上も経って、日中が互いに最大の貿易相手国となり、国交回復から40年経ち、日本が中国に数十億ドルの開発援助を提供した後に、なぜこういうことをするのか。

 習近平は、明らかに、反日感情を強化することが、政権の利益になると考えている。中国は意図的に、関係を悪化させ、責任ある外交を行うことを拒否している。習は、自分が煽っている反日感情をコントロールできると考えているのかもしれないし、あるいは、コントロールしようと思っていないのかもしれない。

 中国政府の行為は、北東アジアの大国が、経済関係の重要さゆえに、最終的には関係改善をするであろう、と信じている人々への大きな警告となろう。北東アジアの三大国は、深い不信感を持っている。彼らは、定期的に貿易をし、国際的首脳会合の場で会談を持っているが、ナショナリストの熱情が協力を凌駕することを許している。


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