日本の安倍総理は、中国の「憎悪拡大装置」に有効な対応をしてこなかった。12月の靖国参拝は、北京とソウルにおける反日感情を強化させただけであった。「慰安婦」のような戦時の残虐行為を認めた、過去の政府見解を見直さない、と確約したことさえ、役に立っていない。しかし、近隣国の容赦ない抵抗を考えれば、実際には、日本にできることは殆ど無い。
結局のところ、各勢力の硬直化した態度が変化すると信じられる理由は殆どなく、それは、北東アジアの安定に関心がある全ての者にとって懸念材料である。早かれ遅かれ、無責任な政策に、代価を払わなければならなくなるであろう、と述べています。
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中韓が歴史問題で日本に対して共闘していることに危惧を示した論説です。米国の識者、それも日米同盟重視派の中にも、こと歴史問題では、中韓の言い分に共感を示す者が少なくない中で、オースリンの論説は日本にとって心強いと言ってよいでしょう。
中国は、全人代で、終戦の日と南京事件の日を記念日に指定した由であり、それは、中国が対日歴史問題を国家政策の中枢に取り入れたということを意味します。こうした状況において、オースリンは、日本としては出来ることはほとんどなく、関係諸国(この論説では日本も含む)は、このような無責任な行動にいずれは代価を支払わねばならないだろう、と言っています。
オースリンも指摘しているように、歴史問題は、数十年前、戦後間もなく起こったのであれば理解できますが、何十年もたって蒸し返された不思議な問題です。
ナポレオンはワーテルローで負けて,戦犯とし配流されてから、ちょうど一世代25年を経てアンヴァリッドに祀られて、ナポレオン批判も終わりました。日本の場合、終戦から一世代経った1970年代10年間は、日本内外で、今のような歴史問題が議論されたことは皆無でした。現在の問題は、すべて1980年代に、当初は日本人の手によって、外国に売り込まれ、それがその後中韓においては国民感情として定着しているものです。
歴史上例のない事態なので、これから先どうなるか見通しがつきません。日本の左派、進歩派が持ち出した問題ですから、日本国内でそうした自虐史観が終われば、自ずから終息するかと期待されましたが、今度は中韓で意図的なナショナリズム高揚の手段として使われているので、日本がどうすることもできなくなっています。ただ、ともに米国の同盟国である日韓間では、あるいは、思いがけない、ふとしたきっかけで風向きが変わる可能性はあるかもしれません。
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